2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520845
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
志村 洋 関西学院大学, 文学部, 教授 (90272434)
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Keywords | 小藩 / 大庄屋 / 割元 / 近世 |
Research Abstract |
岩村田藩割元役を歴任した篠澤家の所蔵古文書の補充調査を行い、史料群の全容を明らかにした(詳細は『岩村田藩割元篠澤家文書目録』として刊行予定)。篠澤家は17世紀前期から幕末まで岩村田町の名主(庄屋)役を勤めてきており、17世紀後期の幕領時代には組内村々への津留番所賄人足や薪の割賦などを行っていたことが明らかになったが、それらはあくまでも陣屋元名主の職掌の一部であった。割元が正式な職制となるのは岩村田藩時代からであり、篠澤家は名主役に加えて18世紀前期から断続的に割元役を兼任した。しかし、同家の職務の大半は名主役としてのそれであり、18世紀中に割元役として史料上表れるものは足軽仲間の徴発、陣屋への諸願取次、地方勘定向、出入立会等に関わる事柄に限られていた。割元は領内惣代としての地位を公認され、管下村々の訴訟では、郷宿機能も発揮しつつその処理にあたっていたが、陣屋役人への取次役が主であり、独自の裁判権は有していなかったと考えられる。近世後期には藩財政は、用達に任じられた野沢村並木家などによって左右されるようになり、陣屋元名主兼割元であった篠澤家は相対的に小さな役割を果たすにとどまっていた。 播州林田藩の大庄屋の場合、一般村役人よりも一段上の権限を有しており、独自の百姓処罰権や村役人の任命権も部分的に有していた。林田藩では全領が4組4人の大庄屋で支配されていたが、陣屋元の林田組では、大庄屋と藩代官との職務上の密接な連携関係が確認できた。林田の大庄屋三木家は播磨を代表する豪農でもあったが、その経営実態の解明は今後の課題として残った。 陣屋元村の大庄屋と陣屋役人との間の、日常生活物資や労働力の提供などを通じた緊密な関係は、播磨国の交替寄合領でも確認できる特徴であり、この点は、大庄屋権限の相対的な小ささとともに、現地に陣屋を持つ小規模領主領には一般的な特徴であったと考えられる。
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Research Products
(1 results)