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2011 Fiscal Year Research-status Report

硫黄流通からみた古代・中世の日本とアジア

Research Project

Project/Area Number 23520847
Research InstitutionKobe Women's University

Principal Investigator

山内 晋次  神戸女子大学, 文学部, 准教授 (20403024)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords硫黄 / 硫黄の道 / 火薬 / 火器 / 朝鮮 / 琉球
Research Abstract

本研究課題の初年度である平成23年度においては、交付申請書の研究計画に記載したように、以前の拙著『日宋貿易と「硫黄の道』のなかで言及できなかった14~16世紀における日本列島産硫黄の国際的な流通状況を中心に研究を進めた。 この結果、まず、14世紀頃以降の朝鮮半島において、中国から火薬技術が伝播したことにより、火薬原料として必須の硫黄が日本から大量かつ継続的に輸入され始めたことが確認できた。また、同時期には、日本列島南辺の沖縄地域において、統一権力の成立過程で三山勢力や琉球王国によって、中国・明への火薬原料としての硫黄輸出が開始されたことも確認できた。 さらに、このような日本列島周辺の状況を探る研究と併行して、中国から東南アジア・南アジア(とくにインド)・西アジア地域への火薬・火器技術の伝播の状況についても文献の検索を進めてみたところ、やはり13世紀後半~14世紀頃が火器・火薬技術の伝播に関する大きな画期である可能性が浮上してきた。 このような14世紀頃以降の状況を、私がこれまで研究してきた13世紀頃までの状況と比較することにより、地球規模の硫黄流通の状況およびそれと連動する火薬・火器技術の拡大が14世紀頃を重要な画期として新しい段階に入ることが推定できるようになった。 この段階の変化とはつまり、ほぼ中国が火薬・火器技術を独占し、そこに向けて火薬原料である硫黄が地球規模で一極集中的に流れこんでいた13世紀頃までの段階から、中国から火薬・火器技術が周辺地域に拡散し、世界各地で火薬原料としての硫黄の需要が高まってきたことにより、地球規模の硫黄流通が多極化・複雑化した段階への移行、という大きな変化ととらえることができるであろう。 日本列島を含むこのような地球規模の硫黄流通状況の歴史的な変化がおぼろげながらでもみえてきたことは、本年度の研究の大きな成果であると考える。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成23年度においては、上記のように、14世紀以後の国際的な硫黄流通において、それ以前の時代とは異なる構造的な変化が起こっている、という見通しを得ることができた。このような見通し自体は、管見の限り、これまでの研究史において明確に主張されたことがなく、十分に意味のある成果であると考えている。 ただし、その見通しは、おもに従来のさまざまな研究文献の成果を申請者なりに組み合わせつつ構築したものであり、そこで利用した史資料も、それらの諸研究において紹介されているものが中心となってしまった。この点については、研究達成度上の若干の問題点といえよう。 本課題研究の進展に関わるこのような状況はおもに、琉球を含む日本中世の硫黄関連史資料に関して、申請者独自の検索が遅れているためである。この日本側の関連史資料ついては、24年度においてさらに広範囲に独自な検索を進め、遅れを挽回していく必要がある。 また、23年度においては、上記のような14世紀頃を画期とする国際的な硫黄流通状況の変化という仮説について、北京・上海で開催された国際学会を含むいくつかの国内外の学会・研究会で口頭発表をおこない、質疑応答や個人的な話し合いを通じて、さまざまな意見をもらうとともに、新たな研究情報を得ることができた。このように、研究成果の活字化と併行して積極的に口頭発表をおこなったことは、23年度における大きな成果のひとつである。 このほか、本来予定していた硫黄関連の鉱山・港湾の現地調査については、おもに申請者の時間的制約のため、十分に実施することができなかった。この点についても、24年度において努力すべき課題である。

Strategy for Future Research Activity

平成24年度の研究においてはまず、23年度内にあまりはかどらなかった、琉球を含む日本中世の硫黄関連史料の網羅的な検索をできる限り進めていきたい。また、このような作業と併行して、申請書の研究計画欄に記載した、中国・朝鮮の10~16世紀における硫黄流通の状況とそれと密接にリンクする火器技術の動向を検討していく。 このような中国・朝鮮の歴史的状況を考察するには、宋~明代および高麗・朝鮮王朝期の漢籍史料を網羅的に検索していく必要があるが、現在ではそれらの多くがデータベース化されているので、その電子データを活用しつつ、できる限り広範囲な検索を進めていきたい。 そして、このように日本側の史料と大陸側の史料の検索が計画通りに進んでいけば、硫黄流通の状況や火器技術の展開に関して、両地域間における歴史的連動の様子がわずかなりとも明らかになるものと思われる。 また、以上のような作業を通じて得られた研究成果を、国際学会を含むさまざまな学会・研究会の場で引き続き積極的に公表していくとともに、硫黄鉱山や硫黄貿易に関連する港湾などの現地調査もおこないながら、国内・海外の研究者との研究情報の交換を積極的におこなっていきたい。とくに後者の現地調査については、23年度において十分に実施することができなかったので、24年度に関しては、意識的に取り組んでいきたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成24年度における上記のような研究を進めていくにあたっては、申請者および所属研究機関が所蔵する文献資料では、いまだ不十分である。とくに、本研究においては、アジア各地で刊行されている書籍をひろく参照することが不可欠である。そのため、24年度においても23年度に引き続き、関連図書(電子媒体を含む)の購入を研究費使用の柱のひとつとしたい。 また、本研究課題を進めるにあたっては、国内外の硫黄鉱山や貿易港などの関連史跡の現地調査もまた重要である。そしてさらに、国内外の研究者との接触による、広範囲な研究情報の収集も必要である。そこで、このような現地調査・学会参加のための旅費が、研究費使途のふたつめの柱となる。 これらのほか、とくに海外の研究情報の入手や海外研究者とのネットワークの構築にあたっては、申請者の語学力では不十分であるので、種々文献の翻訳や学会報告原稿の作成などのために、第三者に翻訳を依頼せざるを得ない。そこで、これらのための一程度の研究費使用も想定している。

  • Research Products

    (5 results)

All 2012 2011

All Journal Article (2 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] 日本史とアジア史の一接点―硫黄の国際交易をめぐって―2012

    • Author(s)
      山内晋次
    • Journal Title

      上海シンポジウム2011報告書 江南文化と日本―資料・人的交流の再発掘―

      Volume: ― Pages: 201-211

  • [Journal Article] 硫黄流通からみた海域アジア史―日本史とアジア史をつなぐ―2011

    • Author(s)
      山内晋次
    • Journal Title

      九州史学

      Volume: 160号 Pages: 35-47

  • [Presentation] 硫黄流通からみた古代・中世の日本とアジア2012

    • Author(s)
      山内晋次
    • Organizer
      名古屋古代史研究会・名古屋歴史科学研究会合同例会(招待講演)
    • Place of Presentation
      名古屋市・愛知県青年会館
    • Year and Date
      2012年2月19日
  • [Presentation] An Attempt of the World History from the Sulfur Perspective2011

    • Author(s)
      YAMAUCHI Shinji
    • Organizer
      20th Annual World History Association Conference
    • Place of Presentation
      中国・首都師範大学
    • Year and Date
      2011年7月8日
  • [Presentation] 日本史とアジア史の一接点―硫黄の国際交易を中心に―2011

    • Author(s)
      山内晋次
    • Organizer
      国際日本文化研究センター海外シンポジウム「江南文化と日本―資料・人的交流の再発掘」(招待講演)
    • Place of Presentation
      中国・復旦大学
    • Year and Date
      2011年5月28日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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