2011 Fiscal Year Research-status Report
戦争末期の国策報道写真資料の歴史学的研究-国防写真隊と東方社を中心に
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23520853
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Research Institution | The Institute of Politics and Economy |
Principal Investigator |
山辺 昌彦 公益財団法人政治経済研究所, 戦争災害研究室, 主任研究員 (90435545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大岡 聡 公益財団法人政治経済研究所, 戦争災害研究室, 研究員 (80366525)
植野 真澄 公益財団法人政治経済研究所, 戦争災害研究室, 研究員 (50446275)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 東方社 / 空襲記録写真 / 国防写真 / 日本写真公社 / 東京空襲 / 香港空襲 / 無差別爆撃 |
Research Abstract |
今年度は、寄贈された東方社のネガフィルムをスキャンすることと、先行して空襲関係写真の内容を明らかにすることが重点的課題であった。全1万7705点のネガフィルムのスキャンを完了し、研究や展示での活用が可能になった。空襲関係写真を研究し、その内容を確定し、リストを作成した。その結果、荏原の民家、高井戸第四国民学校、雙葉高等女学校、上智大学、慶応義塾大学、泉岳寺など、これまで写真が知られていなかったところの被害、中学生や大学生を動員した焼け跡の片付け、線路の復旧作業、焼け跡でのバラックの住宅・理髪店・花屋、焼け跡での葬儀、焼けた工場からの軍隊入隊者の見送り、中国の香港の被害などの、貴重な空襲の記録写真があることが分かった。そこからアメリカ軍の爆撃が初期から軍事施設だけを狙う精密爆撃ではなく、無差別爆撃であることを示す新たな証拠を提供できた。空襲写真の撮影目的が、戦史の資料として空襲の実相を記録するとともに、対外宣伝に使うためでもあることも明らかになった。最後に、従来東方社の写真は宣伝のための演出写真あるいは作為的な写真と考えられてきたが、今回の新資料には記録性の高い写真も多く、東方社写真部の業績を再評価することができた。 もう一つの課題である国防写真隊については、新聞掲載の写真や日本写真公社の写真の分析の結果、東部軍と中部軍のみに置かれ、空襲最中や直後の時だけ、将来の防空のための戦史の記録として、日本の被害やアメリカ軍機の被害を撮影していることが分かった。そこから、日本写真公社が空襲後しばらくたった焼け跡を撮った写真は、従来言われていたように国防写真隊撮影とは言えないことも明らかになった。 研究成果を盛り込んだ論文や、東方社と日本写真公社の空襲写真リストなどを収録した報告書を刊行し、空襲写真の展示会を開催し、成果を広く公開することできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東方社のネガフィルムのスキャンを完了し、東方社撮影の空襲関係写真の歴史的意義と東方社新資料の歴史的価値を明らかに、国防写真隊の実態も明らかにできため、今年度の研究目的を達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
寄贈された東方社写真の全体像の把握とネガ番号順リスト作成をおこなう。重点テーマをたてて分担して、撮影内容確定の調査研究をし、その成果を発表し、検討する研究会を開催する。日本交通公社旧蔵の日本写真公社撮影写真のうち、防空や空襲後の生活関係の写真を収集し、すでに所蔵している日本写真公社撮影写真と合わせて、整理し、目録を作成し刊行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究会参加のための旅費・交通費、写真リスト作成や資料収集のための研究補助者の謝金、日本交通公社旧蔵の日本写真公社写真など収集のための複写費、写真内容確定のための資料購入費と複写費、日本写真公社撮影の空襲関連写真リストの印刷費
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Research Products
(1 results)