2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520860
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
徳永 洋介 富山大学, 人文学部, 教授 (10293276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 正人 金沢大学, 法学系, 教授 (60237427)
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Keywords | 刑罰制度 / 治安立法 / 盗賊重法 / 盗賊窩主法 / 唐六典 / 会典 / 天聖令 / 北宋時代 |
Research Abstract |
本研究の課題は、宋元時代の刑事政策を正規の刑罰体系と各種の治安立法の双方から明らかにしていくところにある。その二年目にあたる今年度は、第一に、北宋時代の刑事政策に関わる史料の整理・分析をさらに進め、「北宋時代の刑事政策と重法地分」と題する論考を作成した。これは昨年度に作成した「北宋時代の重法地分と常法地分」を発展させたもので、北宋時代の治安立法のなかでもひときわ異彩を放つ盗賊重法の輪郭と消長を跡づけるとともに、これが元制でかたちを整え、明律で定着する盗賊窩主法を実質的に準備したことを論証した。その概略は東洋史研究会大会でも報告したが、論考自体は近年中に『東洋史研究』に掲載される予定である。 第二に、『唐六典』の「尚書刑部」の会読作業をひとまず終え、『天聖令』残巻をはじめ、各種の史料と対校しながら訳註稿を作成した。「『唐六典』巻六・尚書刑部訳註稿(上)」(平成25年3月刊)はその前半部分であり、後半部は次年度に公表すべく準備を進めている。これによって、『唐六典』には内容的に不備な部分や缺落が少なくなく、そのままでは典拠として用いがたい箇所が散見する一方で、編纂者たちが描く唐制の典型とその歴史的沿革とが改めて明らかになりつつある。 第三に、上記の訳註作業を通じて、唐律の五刑を杖殺・脊杖・臀杖・編配に読み替えて執行する宋代の刑罰制度がすでに唐代前期の武后朝から恒常的に施行されていた律外の刑罰に淵源することが次第に明らかになってきた。これは玄宗朝を唐制から宋制への転換点としてきた通説に対して大きく修正を迫るものである。 第四に、昨年度に続き12月に共同シンポジウムを開催し、前近代中国の司法制度をめぐる基調報告と関連する討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、宋代に形成され元代に継承された広義の刑事制度を通観し、その具体像を時系列に即して体系的に解明しようとするものであり、当面は北宋時代の刑罰制度と治安立法の関係から作業に着手し、爾後の研究活動の土台づくりをめざしている。というのも、金や南宋の制度が何らかのかたちで北宋の系譜を引くというだけでなく、元制も結局はこの延長上にあるからである。この点で本研究の研究目的は今年度もおおむね順調に達成されたと判断されるが、その理由は下記のとおりである。 (1)北宋時代の治安立法は、唐末五代を経て編戸支配のあり方が大幅な変更を余儀なくされただけでなく、盗賊問題がたえず国家の懸案事項とされるなかで打ち出された。しかも、それは軍兵化された非定住民や犯罪者たちと表裏の関係にあり、国家は景迹や盗賊重法などの刑事政策にとどまらず、治安対策として保甲法を施行したが、これらの施策は北宋末の寛刑政策のなかで次第に空洞化し、南宋では刺環や拘鎖を汎用するかたちに移行したことも分かってきた。しかも、こうした系譜を引く警跡制度が元初から導入された事実からみて、元制が金制を介して北宋の刑制を継承している蓋然性も見えてきた。このように、個々の刑事政策の有機的な繋がりを探ろうとする本研究の狙いは、所期の目的を達成しつつあるばかりか、金元時代の刑事制度を再現するうえでも貴重な収穫をえたと言える。 (2)『唐六典』の訳註作業については、「『唐六典』巻六・尚書刑部訳註稿(上)」としてその前半部を公表した。これは、唐代のみならず、近世中国の法制や各種の法的編纂物をより深く理解するための有力な一歩となるもので、今後この種の分野を裨益するところは少なくないと考えられる。 (3)前近代中国の司法制度をめぐって、今年度も国内の第一線で活躍する研究者との学術交流を深めただけでなく、いっそう内容の濃い議論をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 『唐六典』の「尚書刑部訳註稿(下)」の完成に向け作業を進めるとともに、『慶元条法事類』刑法門と『天聖令』残巻の精読・分析に着手する。 (2) 国内各地の研究機関が所蔵する文献史料の調査を引き続きおこない、宋元時代における各種の治安立法と正規の刑罰制度との関係をさらに掘り下げる。 (3) これらと並行して、「俄蔵黒水城出土文書」や最近公刊された「武義南宋徐渭文書」などの出土文書などから北宋末から南宋におよぶ時代の法制史料の収集・整理を行うとともに、宋元時代の刑事政策を系統的に捉えていく。また、これらの作業を通じて、史料的制約の多い金元時代の刑事制度を考察するための基盤づくりもあわせて行う。 (4)上記の作業を踏まえながら、北宋時代の治安立法に関する研究を完成させるとともに、唐代前期の武后朝に始まる刑制の変化と宋代の刑罰体系との関わりを改めて掘り下げる。 (5) 12月に共同シンポジウムを開催し、近世中国における刑事政策とその展開について、内外の研究者との研究交流を引き続きはかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)本研究の根幹をなす文献史料の調査・収集、さらには研究分担者・連携研究者と進めている基本文献の会読・訳注作業を進捗させるためには、やはり相応の旅費が必須であることから、次年度も平成24年度に準じた国内旅費を計上して研究活動にあてる。 (2)「『唐六典』尚書刑部訳註稿(下)」を作成する必要から、印刷費として15万円を計上するほか、残る研究費は基本的に物品として、さらに陸続と刊行される法制史料や各種消耗品の購入にあてたい。
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Research Products
(3 results)