2012 Fiscal Year Research-status Report
高句麗・渤海をめぐる中国・韓国の「歴史論争」克服のための基礎的研究
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23520861
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古畑 徹 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (80199439)
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Keywords | 国際情報交換 / 韓国 / 中国 / ロシア / 北朝鮮 |
Research Abstract |
今年度は、洛北史学会から大会テーマ「歴史叙述と地域」の報告に対するコメンテータを依頼され、大会(2012.6.2)に招待されて自らの研究成果報告を含んだコメントを行った。特に、本研究で検討している渤海史の叙述方法として、多様な「地域」による多面的叙述という方法があるとの主張を展開した。 また、唐代史研究会夏期シンポジウムにも招待され、中国の「東北工程」のなかで出版された、「藩属関係」「宗藩関係」についての理論的な研究書を紹介・分析し、それらの研究の中では冊封をそのような関係とみる理解に否定的な結論が得られている事実を指摘するとともに、その分析を手掛かりに唐代の国際システムにおいて渤海がどのように位置づいていたかの研究成果を報告した。 さらに、赤羽目匡由『渤海王国の政治と社会』(吉川弘文館、2011)の書評(『史学雑誌』121-8,2012)、および「高句麗・渤海史ウラジオストク国際学術会議参加報告」(『唐代史研究』15,2012)が刊行され、昨年の研究成果の一端が公表された。 なお、東洋史研究会より井上直樹『帝国日本と<満鮮史>』(塙書房、2013)の書評を依頼され、現在執筆中であるが、そのなかに、中国が中国東北部を自国と認識しその歴史を自国史に取り込んでいく過程についての今年度の研究成果の一端を盛り込む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の5つの検討作業(①冊封関係を「宗藩関係」とみなす見解の妥当性の検討、②高句麗・渤海構成種族の滅亡後の動向、③中国が中国東北部を自国領と認識する過程の検討、④教科書・概説書を通してみた中国・韓国の高句麗・渤海認識の変遷の検討、⑤東北アジア歴史財団の動向の検討)に関する資料収集は、平成23年度に引き続く①③及び平成24年度にあらたに重点事項に加わった②に関係する中国書を中心に順調に進んでいる。特に①については、入手した資料の分析を行い、その成果を学会シンポジウムで報告し、現在はその報告を論文化する作業を行っている。また、③に関する国内図書館に対する資料調査はあまり進まなかったが、すでに多くの資料を集めてあるので、分析を開始して論文執筆の準備に入っている。 昨年度に、国際シンポジウムで獲得した韓国・中国以外のロシア・北朝鮮の資料についても、昨年度に引き続き翻訳を進め、韓国の東北亜歴史財団およびそれ以外の国々の研究機関の動向を把握することが可能となり、それをシンポジウムの参加報告の形でまとめることができた。 以上を総じてみると、研究の達成度はおおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究は順調に進んでいるので、平成25年度はほぼ当初計画の通りに研究を進めていくことにしたい。つまり、①冊封関係を「宗藩関係」とみなす見解の妥当性の検討、②高句麗・渤海構成種族の滅亡後の動向、③中国が中国東北部を自国領と認識する過程の検討、については前年度までの作業を継続し、順次研究成果を公表していく。 本年度に新たに重点を置く検討作業は、④教科書・概説書を通してみた中国・韓国の高句麗・渤海認識の変遷の検討、⑤東北アジア歴史財団の動向の検討、の2点で、④については、収集した資料をもとに、中国・韓国双方の認識の変遷を比較したうえで、現代史の流れや論争の状況に関連付けながら読み解いていく作業を行う。⑤については、韓国に行って東北アジア歴史財団関係者へのインタビューを行い、東北アジア歴史財団の全体像を明確にしながら、その動向を詳細に跡付ける研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はほぼ予定通り執行できたが、端数として13円が残った。平成25年度は、韓国でのインタビュー調査がメインとなるため、「外国旅費」や「謝金等」にあたる通訳費・テープ起こし費用などこの調査関係に半分以上の予算を充てる予定である。 また、継続的に資料の購入や調査も実施しなければならず、それらに「国内旅費」や「設備備品費」を充てることとする。
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Research Products
(6 results)