2013 Fiscal Year Research-status Report
高句麗・渤海をめぐる中国・韓国の「歴史論争」克服のための基礎的研究
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23520861
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古畑 徹 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (80199439)
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Keywords | 国際情報交換 / 韓国 / 中国 / ロシア / 北朝鮮 |
Research Abstract |
今年度は、昨年に依頼された報告を原稿化して学会誌に掲載した。 まず、昨年6月に洛北史学会から大会テーマ「歴史叙述と地域」の報告に対するコメンテータを依頼された内容を原稿化し、本年6月の『洛北史学』第15号に掲載された。内容は、本研究で検討している渤海史の叙述方法として、多様な「地域」による多面的叙述という方法があるとの主張を展開したものである。 また、昨年8月の唐代史研究会夏期シンポジウムでの招待講演の内容も、「唐王朝は渤海をどのように位置づけていたか―中国「東北工程」における「冊封」の理解をめぐって」と題して、『唐代史研究』第16号に掲載した。内容は、中国の「東北工程」のなかで出版された、「藩属関係」「宗藩関係」についての理論的な研究書を紹介・分析し、それらの研究の中では冊封をそのような関係とみる理解に否定的な結論が得られている事実を指摘するとともに、その分析を手掛かりに唐代国際システムの三層構造をクリアーにし、そのうえで渤海がどのように位置づいていたかを明らかにしたものである。 さらに、昨年度末に東洋史研究会より依頼を受けた井上直樹『帝国日本と<満鮮史>』(塙書房、2013)の書評を、『東洋史研究』72-4に掲載した。このなかでは本科研での研究成果を踏まえて当該書の評価を行い、新知見を付加している。 一方、新たな研究報告を、本年1月の『日本古代の外交文書』(八木書店)出版記念シンポジウム<古代東アジア・東ユーラシアの対外交通と文書>の報告者として招待され、行った。内容は、渤海史の基本史料である張建章墓碑の中国・韓国における解釈間違いを指摘し、資料を用例を踏まえて丁寧に読むことの必要性を日本から発信すべきことを確認したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画の5つの検討作業(①冊封関係を「宗藩関係」とみなす見解の妥当性の検討、②高句麗・渤海構成種族の滅亡後の動向、③中国が中国東北部を自国領と認識する過程の検討、④教科書・概説書を通してみた中国・韓国の高句麗・渤海認識の変遷の検討、⑤東北 アジア歴史財団の動向の検討)のうち、①はすでにその成果を論考にし、予定より早く十分な成果を得た。②に関しては現在資料収集が進んでおり、成果を最終年度には提示できる予定である。③もすでに多くの資料を集めてあるので、分析を開始して論文執筆の準備に入っている。 一方、本年度に重点を置いた④⑤は、一昨年に多くの資料を入手できていたおかげで研究自体は順調に進んでおり、第一弾の報告はすでに発表済みである。ただ、昨年度内に予定していた東北アジア歴史財団への訪問調査が、先方との日程調整がうまくいかず、年度内で実現できなかった。 以上を総じてみると、ほとんどが順調もしくはすでに目標に達しているが、⑤だけに遅れが出ているため、やや遅れているという評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
東北アジア歴史財団への訪問調査だけが前年度残ったが、これを今年度に加えること以外は、当初予定通りに平成26年度の研究を進めていきたい。 つまり、④教科書・概説書を通してみた中国・韓国の高句麗・渤海認識の変遷の検については、前年度に得られた分析結果をもとにして、中国と韓国の高句麗・渤海認識の変遷を明確にした論文を執筆し、成果を公表する。⑤東北アジア歴史財団の動向の検討については、東北アジア歴史財団への訪問を行ったうえで、東北アジア歴史財団が進んでいこうとする方向性を明確にした論文を執筆し、成果を公表する。なお、東北アジア歴史財団の活動自体はそのまま継続しているので、その情報の収集は継続的に行う。その他の①②③については、成果を公表しつつ、今後につなげるべき資料収集をおこなっていく。 そして年度末には、ここまでに公表してきた成果をまとめた報告書を作成する。報告書では、ここまでで得られた成果をトータルにとらえた「総論」(仮題)を付け、本研究の最終目的である中国と韓国の「歴史論争」を克服するための、高句麗史・渤海史の新たな歴史像・歴史理解を提示する。できあがった報告書は国内の主要な研究機関に配布するだけでなく、国外の主要な研究機関にも配布する。さらには、金沢大学附属図書館の金沢大学学術情報リポリトジ(KURA)に掲載して、一般公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国の東北アジア歴史財団への訪問調査を予定していたが、先方との日程調整がうまくいかず、年度内の実施ができなかったため、そのための旅費及び通訳等の人件費が残ってしまったため、386,178円の次年度使用額が発生した。 すでに東北アジア歴史財団とは連絡を取り合っており、夏期休暇期間の訪問を予定して現在調整中である。
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Research Products
(4 results)