2012 Fiscal Year Research-status Report
現代中国の民族識別期における旗人の動向に関する研究
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23520870
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
ボルジギン ブレンサイン 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (00433235)
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Keywords | 現代中国 / 少数民族 / 旗人 / 民族識別 / 区域自治 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、現代中国の国家の基本構造を形成している56の民族の枠組みが確定される1950年代において、中国領内に暮らす各民族集団が如何に整理、認定されていったかを、旗人諸集団の動向を把握することによって分析するものである。その目的は、清朝という一つの帝国の解体から中華人民共和国というもう一つの多民族国家(「帝国」)の組み立て過程において、規模の異なる民族集団は如何に融合集散を繰り返してきたかを明確にすると同時に、民族とは如何につくられていくものなのか、そして国家によって人為的につくられた民族という枠組みに生きる人々の集団的所属意識が如何なる状態であるのかを解明しようとするものである。 24年度においては、予定していた海外調査を重ねた以外に、12月においては「中国の政治改革と少数民族の権利ーいわゆる「第二次民族政策」をめぐってー」と題する国際シンポジウムを開催した。このシンポジウムではそれまで緊密に協力してきたケンブリッジ大学やハーバド大学、中国社会科学院など少数民族研究で世界的に知られている海外の研究者を一度に集め、中国で顕著になってきた少数民族政策の動きを学術的に検討した。このシンポジウムはこの科研の中期成果として日本国内や海外に広くアピールできたものと思います。 また、24年度の9月にはウランバートルにおける国際学術会議では「旗人はどこへ行ったのかー」と題する研究発表を行い、本科研の研究業績を公表した。内モンゴルを中心に、中国の少数民族地域における実態調査では各地で進行している少数民族民族政策への反省や点検など最新の動きも即刻捉えて、新たな研究業績として取りまとめたいと努力しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現代中国の56の民族が識別、認定される1950年代において、各少数民族集団は如何に認識、整理されていったかを旗人諸集団の足跡を追うことによって明らかにしようとするものである。この作業を通して、清帝国の解体から中華人民共和国というもう一つの「帝国」の組み立てに至る間における民族集団の離合集散を分析し、現代中国への理解を深めたい。 これまでの二年間、それまでも進めてきた中国各地に住む旗人の子孫に対して、その民族的帰属意識に対して調査を行い、彼らが旗人という集団から分離して生まれた「満族」「モンゴル族」や「シベ族」そして一部の「漢族」など関連各民族の枠を跨って、常に揺れ動き、いまだに定まっていない集団がいることが分かった。これは、少数民族という枠組みの制定そのものがきわめて人工的作業であったことを物語るものであると同時に、少数民族という枠組みのなかでは歴史的要因に左右された各種の緩い空間が存在していることを意味するものである。本研究はその目的とする少数民族の枠組みの本質を現代中国の国家構成の一側面として分析するものとして着実に前進したと考えている。 近年、中国では少数民族政策に対する見直しの動きが活発になってきている。その一部には民族の枠組みそのものを廃止したいとする動きもある一方、中国が抱える民族問題の根源には、1950年代ころから実施してきた少数民族に対する基本政策をきちんと実施してこなかったことがあるとする見方もあり、両者は激しく議論を展開している。当然その中には本研究が目指す1950年代初期の各種の枠組みや政策制定の詳細が議論されており、24年12月に開催した国際シンポジウム「中国の政治改革と少数民族の権利ーいわゆる「第二次民族政策」をめぐって」はこの目的に沿った重要な議論ができたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は本科研の最後の年度になりますが、秋までには今までの調査で不十分であった地域に対して補足調査を進めていきたい。当然、その際には今までも協力してきた海外の研究者との共同作業が中心となり、海外においても本科研にかかわる学術交流を進めていきたい。 そして年度末には科研の締めくぐりとして国際シンポジウムを企画し、その結果を踏まえて論文集など科研の成果を公表していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度からの繰り越し額は今年度末に開催を予定している国際シンポジウムに充てる計画です。
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Research Products
(13 results)