2013 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシアにおける暴力と社会秩序の比較文化史的研究
Project/Area Number |
23520891
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋場 弦 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (10212135)
|
Keywords | 暴力 / 紛争 / 紛争解決 / 民主政 / アテナイ / ギリシア / 古代 |
Research Abstract |
最終年度はポリス社会における暴力と社会秩序維持の諸側面を、アテナイ民主政に焦点を絞って解明することに努めた。その際、前7~6世紀におけるアテナイでのスタシス(stasis)すなわち党争の政治的社会的構造、および前404年の寡頭派革命=民主政転覆という政変とそこにおける暴力の行使、ならびに翌年の民主政回復に伴う内戦の終結と和解の諸相を、古典史料の解析を通じて明らかにした。とくに重要となる史料は伝アリストテレス『アテナイ人の国制』1-20章、および34-40章にかけての記述であるが、M.H.Chambersが校訂した最新のテクストには原文の読みをめぐって問題が多く、テクスト復元の観点から、写真版および大英図書館デジタル画像(http://www.bl.uk/manuscripts/FullDisplay.aspx?ref=Papyrus_131)の精細な分析が不可欠であった。 アルカイック期の党争に関しては、地域的権力集団におけるエリートと民衆との人的紐帯と支配の構造を明らかにすることに努めた。アッティカの地域貴族(エウパトリダイ)は、都市的センターとの関わりを保ちながらも、なお周縁各地における農業生産および銀産出の指導権を確保しており、それを用いた人身支配のネットワークを築いていた。アテナイ国家を統合するという目的からは、この地域的人身支配のネットワークを断ち切ることが求められ、前508/7年のクレイステネスの改革は、その目的を一部達成することに成功したが、なお地域権力の残存は見られた。 他方前404年から翌年にかけての政治変動では、民主政というシステムの内部に伏在する矛盾が露呈する形で市民団が分断されたが、結果としては民主政の復元力が分解力を上まわり、ギリシア世界で共有される和解の理念と様式に従って、ポリス市民団の再統合が実現した。
|
Research Products
(4 results)