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2011 Fiscal Year Research-status Report

ゲルマン部族国家の宮廷構造に関する比較史研究

Research Project

Project/Area Number 23520897
Research InstitutionNagoya University

Principal Investigator

加納 修  名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (90376517)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords西洋史 / 中世 / ゲルマン部族国家
Research Abstract

本年度は、ゲルマン部族国家の宮廷に関する史料と研究文献の調査と収集を行うとともに、各王国の首都の特徴について比較研究を進めた。西ゴート王国においてはトレドが、ランゴバルド王国においてはパヴィアがなかば恒常的な首都として機能したのに対して、フランク王国では分割相続の慣行が採用されたこともあって、政治的な中心地が分散し、ひとつの都市が永続的に首都機能を集約することにはならなかったことが明らかになった。また西ゴート王国ではトレドが主要な教会会議の場として選ばれ、同時にそこで王国統治の問題が議論されたのに対して、フランク王国では王国集会と教会会議とが原則として分離していたことが、首都の選択と機能に大きな影響を及ぼしたことが明らかになった。ただし、宮廷の地誌的構造にはしばしば共通点が見られ、宮廷にはたいてい教会が付設された。そこには浸透しつつあるキリスト教や聖職者が王国統治に有した意義が反映しているが、同時にゲルマン人の王たちはかつてのローマ皇帝や同時代のビザンツ皇帝を模倣したのであった。また、フランク王国の宮廷では、銀貨であるデナリウス貨幣を用いた奴隷解放や、相続権を持たない者に財産を相続させる手続きが王の面前で行われていたことを突き止めることができた。地方役人の面前で行うことが通例の法律行為が王の面前で行われたところに、メロヴィング宮廷の独自の役割を見て取ることができる。宮廷集団の活動という面から、ゲルマン部族国家の宮廷構造の比較を行うことにより、これら国家の統治構造の重要な相違点を明らかにすることができるという見通しを得ることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ゲルマン部族国家の首都に関しては、各王国の首都の選択や地誌的特徴についての調査をある程度進めることができた。また、統治空間としての宮廷の意義については、主として教会会議との関連について考察し、とりわけ西ゴート王国とフランク王国の統治における宮廷の意義の相違を明らかにする手がかりを得ることができた。同じく、フランク王国において、国王宮廷が特別な私法行為が行われる場である事実を突き止め、ゲルマン諸国家における宮廷の意義を比較史の観点から考察するための新たな手がかりを得ることができた。以上の成果を得られたので、研究はおおむね順調に進展していると考えている。

Strategy for Future Research Activity

古書で購入予定であったゲルマン古代学事典が古書で流通しておらず、予定の3倍以上の価格で購入しなければならなくなり、3年間の研究計画ならびに経費使用予定をかんがみて、事典全巻を一括して購入しなかったことと、資料収集のための国内出張の回数が予定より少なくなってしまったために、次年度への繰越金が12万円ほど生じた。次年度はゲルマン古代学事典の残りを購入するとともに、資料収集を進め、ゲルマン部族国家の首都に関する調査を継続する。 本作業と平行して、各王国における宮廷官職とその機能、担当者の出自や経歴を比較検討する。民族帰属、身分、経歴を基準として設定して調査し、王国による異同を明らかにする。官職を帯びずに宮廷で重要な役割を果たした人物についても、同様の基準に基づいて調査を進める予定である。 そして得られた成果を雑誌等に投稿するとともに、学会等で発表する予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度も、物品費すなわちゲルマン部族国家関連の文献の購入に主要な経費を充てる。本年度第18巻まで購入したゲルマン古代学事典の残り(第35巻まで)を購入するとともに、関連史料や大量に発表されている研究文献を入手する。購入の困難な文献については、日本の大学に所蔵されている場合、図書館相互貸借サービスを通じて借り出すか、あるいは貴重図書の場合には、所蔵する図書館に赴いて必要部分を閲覧する。 また、フランスのパリにあるフランス考古・歴史学協会において研究成果を報告する予定であり、このために国外旅費を使用する。

  • Research Products

    (7 results)

All 2012 2011 Other

All Journal Article (1 results) Presentation (2 results) Book (3 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] (書評)大黒俊二著『声と文字』2012

    • Author(s)
      加納 修
    • Journal Title

      歴史学研究

      Volume: 888 Pages: 59-61, 64

  • [Presentation] "Configuration" d'une espece diplomatique: le praeceptum denariale dans le haut moyen age2011

    • Author(s)
      Osamu KANO
    • Organizer
      グローバルCOE第12回国際研究集会「歴史におけるテクスト布置」
    • Place of Presentation
      名古屋大学
    • Year and Date
      2011年9月2日
  • [Presentation] Quelques reflexions sur les formes de la fides facta2011

    • Author(s)
      Osamu KANO
    • Organizer
      Journees d'Etudes medievales de La Roche-sur-Yon(招待講演)
    • Place of Presentation
      Centre Hannah Arendt, Institut Catholique d’Etudes Superieures
    • Year and Date
      2011年10月6日
  • [Book] ARM Corporation2012

    • Author(s)
      Osamu KANO (ed.)
    • Total Pages
      279
    • Publisher
      Configuration du texte en histoire / 歴史におけるテクスト布置
  • [Book] テクストの解釈学2012

    • Author(s)
      松澤和宏・佐藤彰一・重見晋也・加納修ほか
    • Total Pages
      444
    • Publisher
      水声社
  • [Book] フランス史研究入門2011

    • Author(s)
      佐藤彰一・中野隆生・毛利晶・小山啓子・加納修ほか
    • Total Pages
      398
    • Publisher
      山川出版社
  • [Remarks]

    • URL

      http://www.lit.nagoya-u.ac.jp/~seiyoshi/page_kano.html

URL: 

Published: 2013-07-10  

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