2014 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国における「市民」と「国民」の差異化に関する比較史的研究
Project/Area Number |
23520907
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
中野 由美子 成蹊大学, 文学部, 教授 (40362214)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | アメリカ史 / 先住民史 / シティズンシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀半ば以降の合衆国においては、国民統合の機運が高まるなかで海外領土の獲得が進み、国内においては建国以来の「市民ではないインディアン」(noncitizen Indian)という法的地位を再定義する必要性が生じる一方で、新たに合衆国の海外属領となった地域では「市民ではない国民」(noncitizen national)という法的地位が創出された。本研究の目的は、19・20世紀転換期の合衆国における「市民」と「インディアン」・「国民」の差異化の過程に注目して、保留地・併合地・海外属領における諸施策に関する比較史的研究を通じて、その歴史的意義を検討することである。 平成26年度には、上記の研究テーマに基づき、主に二つのトピックに関する研究を行った。第一に、合衆国の先住民に対する市民権付与の歴史に即して、建国以来の「市民権」概念がどのように変容したのかを検討した。具体的には、連邦の三権において、先住民の市民権問題に関して様々な解釈が提示されてきたことに着目し、「市民権」概念の内実が変容する過程を検証した。その際に、アフリカ系アメリカ人などの少数派集団との比較も適宜行った。さらに、全先住民に無条件に市民権を付与した1924年の市民権法について、その歴史的意義を検討した。その成果の一部は、論考の形で今年度中に公表する予定である。第二に、19・20世紀転換期の合衆国における先住民政策に関して、海外植民地における先住者に対する政策との関連性を比較する基礎的な研究を行った。すでに先住民教育史の先行研究においては、先住民保留地における教育政策とアメリカ植民地期のフィリピンにおける教育政策のあいだには、理念的・人的な連続性がみられるとの指摘がなされてきた。そのため、主に政策理念という観点から一次史料の収集と精読を行った。この点については、今後も引き続き研究を進めていく予定である。
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