2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520916
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
田野 大輔 甲南大学, 文学部, 准教授 (60330122)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナチズム / セクシュアリティ / 性政治 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
本研究は、セクシュアリティの問題を軸に、ナチズムの政治の実態を歴史社会学的に考察し、とくに(ア)性道徳・性教育、(イ)売春・避妊・婚外交渉、(ウ)同性愛・ヌーディズム・ポルノグラフィーの問題において、性と権力がどう関わり、欲望の動員にどう寄与したのかを明らかにしようとするものであるが、本年度はとくに(ア)に焦点をあてつつ、(イ)と(ウ)にも対象を拡大して、(a)ドイツの文書館・図書館等での史料調査と、(b)所属研究機関での史料分析・研究調査を同時並行的に進めることにより、以下のような研究成果を得ることができた。(ア)については、ナチズムがワイマル共和国の道徳荒廃と風紀紊乱を批判し、家庭生活の保護と性規範の回復を唱える一方、健全な性生活をめざす一部の医師・教育者の啓蒙活動を支持し、人口・人種政策的な目的を追求しつつも、禁欲的な性道徳の克服をはかることで、部分的に「性の解放」を促進していた事実を実証的に明らかにすることができた。(イ)については、ワイマル共和国の性的退廃を批判したナチズムが、売春や婚外交渉を不道徳として弾圧する一方、民心の維持をはかるため、そうした性交渉を黙認し、一部で奨励していた事実について、これをある程度まで裏付けることができた。(ウ)については、風紀紊乱として取り締まりの対象となったヌーディズムやポルノグラフィーが、ナチ党内の路線対立や利害対立のなかで、抑圧・黙認・奨励の絡み合う複雑なコントロールの対象となり、結果的に性欲の発散を促す「解放的」な政策につながった事実について、これを大部分まで裏付けることができた。以上の研究成果については、本年度中に学術論文として発表するにはいたらなかったが、すでに学術論文にまとめる作業はほぼ完了しており、次年度中にこれまでの研究成果をまとめて著書を出版する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の3つの研究対象、すなわち(ア)性道徳・性教育、(イ)売春・避妊・婚外交渉、(ウ)同性愛・ヌーディズム・ポルノグラフィーのうち、本年度はとくに(ア)に焦点をあてることを予定していたが、すでに研究の蓄積があったこともあって、当初の計画以上に研究が進展し、目的を達成したことから、計画を前倒しして(イ)と(ウ)にも対象を拡大し、次年度以降の研究を進めることができた。(イ)については目標の半分程度、(ウ)については7割程度までしか研究が進展していないが、本来は次年度以降に実施することになっていた研究であることを考えれば、当初の計画を上回る進展状況といえる。これらの研究成果について、本年度中に学術論文として発表するにはいたらなかったものの、すでに学術論文にまとめる作業はほぼ完了しており、次年度中にこれまでの研究成果をまとめて著書を出版する目処もついている。次年度以降は、(イ)と(ウ)の研究の進展と目標の達成をはかるとともに、予定よりも早く研究成果をまとめる作業を進めたいと考えている
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、本研究の3つの研究対象である(ア)性道徳・性教育、(イ)売春・避妊・婚外交渉、(ウ)同性愛・ヌーディズム・ポルノグラフィーのうち、とくに(イ)と(ウ)に焦点をあてて、研究の進展と目標の達成をはかりたいと考えている。(イ)については、とくにナチズムによる売春の規制・管理の実態とその目的、避妊具の販売と出産奨励策との矛盾、婚外交渉の奨励と出産奨励策との関係などを明らかにするため、医療・保健・教育当局関連の文書や雑誌の調査を行う。(ウ)については、とくにナチズムによる同性愛者迫害の動機や婚外交渉奨励策との関係、ヌーディズム奨励の実態とポルノグラフィー蔓延との関係、裸体の理想化と女性イメージとの関係などを明らかにするため、ナチ党指導部や親衛隊幹部の文書、ナチ党や親衛隊関連の雑誌の調査を行う。以上のような目標の達成をはかるため、次年度以降も(a)ドイツの文書館・図書館等での史料調査と、(b)所属研究機関での史料分析・研究調査を同時並行的に進める。また、(ア)~(ウ)それぞれの問題について、学術論文の形で研究成果の発表を進め、次年度中にはこれまでの研究成果をまとめて著書を出版したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本研究の3つの研究対象のうち、とくに(イ)と(ウ)に焦点をあてて、研究の進展と目標の達成をはかりたいと考えており、そのために必要な史料・文献を得るため、2回にわたってドイツの文書館・図書館等で史料調査を行う。研究費のうち、7割程度はこのために使用する。また、次年度は、(ア)~(ウ)それぞれの問題について、学術論文や著書の形で研究成果の発表を進めることを予定しており、そのために必要な史料・文献の購入や、論文の翻訳などにも研究費をあてる予定である。
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Research Products
(1 results)