2011 Fiscal Year Research-status Report
都市造営の思想読解の研究-平泉におけるGIS(地理的情報システム)の利用-
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23520921
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
前川 佳代 奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 協力研究員 (70466415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 邦宣 盛岡大学, 文学部, 教授 (80405878)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | GIS(地理的情報システム) / 都市 / 考古学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、地理的情報システムであるGISを利用して、岩手県・平泉の発掘調査で検出された遺構のデーター化と空間分析・解析を行い、それらを基に周囲の遺跡や地理的環境からマクロ的視点で奥州藤原氏の都市造営の思想を読み解くものである。研究期間内に、1.発掘調査遺構のデーターベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討、4.都市内の集水システムの解明、5.旧地形の復元を行う。 平成23年度は、目的の1、2、3の作業を行った。2については、さらに詳細なデーター入力のため、発掘調査時の遺構原図を借り出す交渉を、平泉文化遺産センターと岩手県教育委員会の柳之御所遺跡調査事務所に行った。幸い原図の貸し出し許可を得た。 本研究は、考古学におけるGISの有効性を確認することも目的としているが、代表者が作成したデーターを共有し、平泉でもGISを日々の調査に利用することで、その有効性を図る。そのためソフトはArcGISで統一し、研究分担者の大矢邦宣氏の協力でソフトが活用できる容量のPCを平泉文化遺産センターに入れた。ソフトを活用し新しい調査データーの蓄積を行うよう平泉文化遺産センターに交渉し、平成24年度から開始されることになった。 東日本大震災による地殻変動は平泉周辺にも及び、国土地理院の公開データーでは南東方向に2.7m移動したという。それを具体的に確認するために現地のGPS調査を行った。北緯39度ラインが中尊寺境内を通るため、そのラインの復元を行ったところ、北に約1m移動していたことがわかった。今後の現地調査においても補正しながら調査する必要性を痛感した。 さらにこれらの作業とは別に、平泉の宗教施設と風水思想について、都城制研究集会で報告する機会を得られ、本研究の目的である都市造営の思想と、宗教施設の配置や風水思想について考察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、研究目的の1.発掘調査遺構のデーターベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討することを手がけた。具体的には、2に関わる報告書の図面をスキャニングしてGISソフトにはめ込んでいく作業と、3の現地調査における地殻変動の確認、1を作成するために平泉文化財センターと柳之御所遺跡調査事務所において、将来的に有効なデーターベース作成について検討し、さらに2を充実させるために原図の貸し出しを了承していただくといった、本研究を深化させるための綿密な準備期間となった。 データーの集積に研究計画の変更が出てきたが、原図の借りだし許可をいただいたことは、より詳細なデーター入力による都市構造の復元図面ができ、平泉の都市造営の思想の解明につながるものとして大きな収穫であった。原図の遠隔地への移動は移動中の事故というリスクがあるため、慎重にならざるをえない。許可いただいたのは、本研究への理解が得られた結果と思われる。 現地調査は、震災の影響で東北新幹線が普通ダイヤに戻った9月後半以降に2回行った。東日本大震災による地殻変動により、今後の現地調査においても補正をかけながら調査する必要性が痛感された。 また都市造営の思想に関わる、平泉の宗教施設と風水思想について考察を加え、1月の都城制研究集会で発表することができた。 以上より、一部研究計画を変更しなければならいが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、研究目的である1.発掘調査遺構のデーターベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲な地理的環境から検討することを続けながら、4.都市内の集水システムの解明、5.旧地形の復元も手がけたい。 まず充実させるのは、借り出した発掘遺構原図をデーター化し、幾何補正してGISソフトにはめ込む作業である。遺構原図は、柳之御所遺跡だけで1400枚を越える。平泉町分はこれまでの調査次数から考えて2000枚は優に超えると思われる。そのため原図のデーター化には業者に依頼することや、学生アルバイトも考えたい。柳之御所遺跡の原図のデーター化と幾何補正は平成24年度中に終わらせる予定である。また平泉文化遺産センターに保管されている図面も、管理の関係でセンター側が出しやすい図面からお借りできることになったため、随時行う。さらに報告書の図面に関しても引き続きスキャニングと幾何補正の作業を行う予定である。 現地調査においては、震災による地殻変動は補正することにより、今までの地図に表示できることがわかったので、より念入りな踏査をGPSを用いてデータ補正しながら行う。また現地調査には現地に通じている案内者に同行していただき、より効率のよい調査を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究は、発掘調査遺構原図をデーター化し、幾何補正してGISソフトに落とす作業が中心となる。 平成23年度に未使用額があるのは、当初予定していなかった原図でのスキャンとデーター入力を行うことになったため、原図のやりとりで発生する宅配便代や大量の原図のスキャニング代に備えてのものである。スキャニングの一部は業者に依頼することを考えている。業者に依頼する場合、原図移動中の事故が想定されるため、平泉町近辺の業者を探し、依頼することも考慮している。 柳之御所遺跡の約1400枚の原図スキャニングと幾何補正を平成24年度で終わらす予定である。平泉文化遺産センターが所蔵する平泉町分の発掘遺構原図は、2000枚を優に超えると思われる。これらもセンター側が出しやすいものから随時送っていただき、スキャニングする予定である。このため未使用額や平成24年度の交付金は大量の発掘調査遺構原図のデーター化に使いたい。また作業には人海戦術もありうるため、謝金も予定している。 このほかに、現地調査において、震災による地殻変動が明らかになったので、GPSやデジカメを使った踏査にくわえ、データー補正を行いながらの念入りな踏査の必要が出てきた。そのための旅費を予定している。また案内してくださる方への謝金も考慮したい。
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Research Products
(1 results)