2011 Fiscal Year Research-status Report
民族誌を用いた土器型式の動態把握のための理論的研究
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23520935
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 龍三郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80163301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中門 亮太 早稲田大学, 付置研究所, 助手 (60612033)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イーストケープ |
Research Abstract |
2011年度は、3月11日の東日本大震災により大幅に計画を変更せざるを得なかった。本研究の分担者、協力者にそれぞれ1名ずつ被災地域の出身者がおり(福島県、青森県)、パプアニューギニアでのフィールド調査を断念さざるを得なかったので、2012年度に予定していたパプアニューギニア関係のシンポジウム(『パプアニューギニア民族誌から探る縄文社会』)を早稲田大学で開催した(2012年2月25日、26日早稲田大学大隈小講堂)。シンポジウムでは早稲田大学、南山大学、天理大学で同地域を研究する合計9名の研究者が研究発表を行った。その折に『パプアニューギニア民族誌から探る縄文社会発表要旨集』を刊行した。本シンポジウムで、研究代表者の高橋と分担研究者の中門がそれぞれ研究発表を行い、要旨集に論文を発表した。また2009年に埼玉県鶴ヶ島市教育委員会から早稲田大学会津八一記念博物館に寄贈されたパプアニューギニア関連の民族誌資料をもとに、同博物館で『オセアニア民族造形美術品展』を開催し(2011年11月21日~2012年2月10日)、資料を展示し公開するとともにカタログ『オセアニア民族美術芸術品展解説』を刊行した。 2010年度に実施したパプアニューギニア、イーストケープ地方の民族誌調査の結果を『史観』第166冊に発表した(「パプアニューギニアにおける民族考古学的研究(8)」)。縄文時代およびパプアニューギニアの民族誌に関する講演会の依頼が2件あった。1件は青森県八戸市是川縄文館で12月17日、「是川遺跡と亀ヶ岡社会」という演題、もう1件は埼玉県鶴ヶ島市教育委員会の要請で、12月18日に「パプアニューギニアの精霊とハウスタンバラン」という演題で講演を行い成果を開示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響により、パプアニューギニアのイーストケープ地方においてフィールドワークを実施する計画は断念さざるを得なかったが、代わりに早稲田大学内に収蔵されるPNG民族資料(鶴ヶ島コレクション=会津八一記念博物館収蔵)を分析し、成果を博物館で展示公開(約3か月間)するなど、カタログの政策刊行とともに多くの成果を上げることができた。 また本来2012年度に計画していた公開シンポジウムを1年前倒しして2012年2月に実施した。これは早稲田大学、南山大学、天理大学の3大学が合同して開催し、『パプアニューギニア民族誌から探る縄文社会』というタイトルのもと、2日間にわたり開催した。専門研究者9名から研究成果を発表してもらい、同地域の民族誌に関する総合的知見をまとめることができたので、大きな成果を得たと考えている。これらのほかに2010年度に実施したパプアニューギニアのイーストケープ地方における民族誌調査の成果を雑誌論文として公表した。 2011年度は、震災の影響で現地での民族誌調査を予定通り実施できなかったが、それに代わり、これらの研究成果を上げることができたので、研究目的はかなり達成できたのではな以下と考える。しかし、2012年度には現地調査を実施することが望ましい。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度は震災関連の影響でパプアニューギニア、イーストケープ地方の土器製作に関する民族誌調査が実施できなかったので、当初の計画に戻って、同地域に入って民族誌の調査を実施する計画である。特に離れ小島のワリ島に渡海して、女性土器製作者の系譜や親族組織、婚姻形態、技術継承関係、土器の交易関係の実態について民族誌調査を実施し、他島との関係についても調べる。「ワリ式土器」の異名を持つ土器の製作技術についても製作過程を復元してもらい、それを収録する予定である。 一方、PNG本島にあるイーストケープ地方の土器生産についてもトパ地区をはじめケヒララ地区において、親族構造、トーテム関係などについて調査する予定である。さらにトパ地区の西方に広がるイブライ地区やビワ地区では土器は製作されないが、親族構造やトーテムなどについて基本的情報を収集し、トパ地区やケヒララ地区との対照的なあり方を検討する。 またセピク川中流域におけるイアツムル族、サヲス族。クォーマ族などの土器製作についても調査し、イーストケープ地方との比較を行い、製作技法や社会的コンテクスト、交易方法の違いなどについて検討する。 それらの成果を国内で分析し、土器型式の成立に関して、トーテムの与える影響や、婚後居住形式が土器型式分布に与える影響についても検討し、2013年度には最終的な成果報告書をまとめると同時に、公開シンポジウムを開催し成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は8月から9月にかけて、PNGのミルンベイ州イーストケープ地方に出かけて、土器製作に関係する民族誌を収集する計画である。特に親族構造や婚姻システム、トーテムなど基本情報が完全には収録されていないので、それを補完する。またワリ島に渡海し、同島で土器を生産する女性製作者に聞き取り調査を行い、系譜関係、婚姻関係、交易仲間など基本情報について調査する計画である。また製作者の技術についても調査する。この民族誌調査には最低でも2、3名の研究協力者が必要なので、代表者が大学で研究指導する大学院生を帯同して調査にあたる予定である。 帰国後、調査で得られた記録類を整理し、分析と検討を経て、成果報告を雑誌論文として発表する。
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