2014 Fiscal Year Annual Research Report
村落耕地の極微細地名における地域差および集落差とその自然的・社会的条件
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23520952
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今里 悟之 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90324730)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 小地名 / 村落空間 / 空間認知 / 認知言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体の課題は,日本の村落空間における極小スケールの微細地名である田畑一筆ごとの名称(筆名:ふでな)の実態を明らかにし,命名のパターンや一般的傾向を見出すこと,さらに,そのようなパターンや傾向について,地域間の差異,集落間の差異,集落内部の世帯間の差異などを分析し,その差異を生み出す自然的・社会的条件について考察することであった。研究期間全体を通じての主なフィールドは,長崎県平戸島の農村集落であった。 本年度までの研究成果として,主に2点が挙げられる。1点目は,筆名の命名原理の多くについて,認知言語学の諸概念(アフォーダンス,プロトタイプ,ランドマークとトラジェクター,ベースとプロファイルなど)で説明できることが明らかになったことである。本研究を通じて,村落空間というミクロなスケールにおける,人間一般の空間認知に関する原理や傾向の一端が明らかになった。 成果の2点目は,本研究課題以前の研究の知見(事例地域は滋賀県の近江盆地)とも比較したうえで,筆名の命名パターンには大きな地域差や集落差,さらには同一集落内でも時に世帯差が著しいことが判明したことである。このような差異を生み出す背景としては,地形条件,地割形態,土地所有形態,周囲の景観,個人の空間認知様式などを指摘し得る。特に地形条件として,耕地が展開する一帯の傾斜度が地割形態や空間認知との関係で重要であり,平戸島の場合,急傾斜地では一般にカトリック住民が耕作を行っていることが多いことから,住民の宗教的属性やその歴史的・社会的背景も無視できないことが明らかになった。このため本年度は,事例集落や事例世帯の位置づけと歴史的・社会的背景をより明確にするために,平戸島全体を対象とした各集落の宗教的属性とその分布やその由来に関する研究,およびカトリック集落の社会構造上の特性に関する研究を実施した。
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Research Products
(2 results)