2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520961
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山崎 孝史 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (10230400)
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Keywords | 沖縄 / 軍事化 / 場所 / 政治地理学 |
Research Abstract |
平成24 年度は、まず23年度に未終了であった沖縄市コザ地区の調査結果の分析を進め、さらにゲート通りにおける外国人商店経営者を中心とする聞き取りを24年9月に実施し、コザ暴動に関与した当事者による回顧記録の分析結果についての論文を寄稿した。24年度調査の目標であった金武町の調査は25年2月に実施したが、インフォーマント(新開地社交組合員)の都合により、インテンシブな聞き取りは5月に延期された。代わって宜野座村漢那区における軍用地料の配分に関する聞き取り調査を実施し、金武町と宜野座村における軍用地料と地域共同体の変容の関係を分析した。あわせて金武町新開地と周辺農村部との社会経済的(共同体)構成の差異を比較検討し、北部基地所在市町村の存立構造を明らかにしていく手がかりを得た。 23年度調査の成果は、24年10月と11月に各種研究会で「日本の境界研究―政治地理学の視点から」、「境界都市研究の視点」と題して、そして境界研究国際会議で「Koza as a borderland」と題して口頭発表し、コザを事例として在日米軍基地の街を支配/被支配の関係が交錯する事実上の「境界集落」として再概念化し、探究する新しい視座の確立を目指した。また、23年度調査で入手できたコザ暴動の回顧記録をもとに執筆した「軍民境界都市としてのコザ」と題する論考は25年度に公刊予定である(出版社に入稿済み)。これらの調査結果は同じく25年度に改定される著書『政治・空間・場所』の内容にも反映されている(出版社に入稿済み)。 以上のように、基地返還についての展望を描きにくい中北部基地所在自治体についての社会経済的・政治的構成の分析は、やや遅れながらも進捗しており、25年度以降に実施する基地返還の進む自治体との比較研究の素地を確立することができたと評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画通りに沖縄島北部における現地調査を実施したが、現地調査の実施が2013年2月であっとことと23年度調査結果の分析が24年度にずれ込んでおり、その分北部における調査の一部を実施できていない。しかし、本研究の成果は着実に公刊されており、25年度には遅れを取り戻すべく取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25 年度の調査地は北谷町である。北谷町では、キャンプ桑江が町域の大部分を占め、嘉手納基地が町北部で深刻な騒音被害を起こしてきた。山﨑(2008c)で検討したように、北谷町はこれまで戦略的に基地返還を勝ち取り、返還地やその地先に造成された海岸埋立地を効果的に商業開発に結び付けている。それらは跡地利用の成功例とされ、脱軍事化の進展を町域全体で確認できるケースである。しかし、観光地化した「アメリカンビレッジ」のように、米軍基地にかかわる場所イメージを完全には払拭していない。そこでまず、これら基地跡地利用の事業実績と運営現状を北谷町総務部企画財政課企画係・建設経済部経済振興課、「ハンビータウン」および「アメリカンビレッジ」運営組織に対する聞き取り調査によって把握する(第1回調査)。次に北谷町の基地返還・跡地利用政策の展開と反基地の世論・革新町政との関係について、北谷町公文書館・教育委員会による行政・戦後史資料提供と協力のもとに把握する(第2 回調査)。最後に、長年続く革新町政と米国のイメージを消費する大規模な商業空間の創設を住民がどう評価し、そうした再開発からどのように地理的に分化した物的・心的影響を受けているかについて、町内11 地区(自治会)から抽出される約500 名の住民へのアンケート調査によって把握する(自治会町連絡協議会の調査協力が得られない場合は住民との直接面接調査で代替する)(第3 回調査)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(13 results)