2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23521006
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, 講師 (30401425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 和之 立命館大学, 文学部, 講師 (40469185)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / ネパール / インド |
Research Abstract |
ネパールにおける動物認識の民族・カースト間比較を目指す本研究では、当初の計画通り、研究代表者の橘、分担者の渡辺が、ネパールでの現地調査を実施した。橘は、チェパン社会における動物の視点、魂の移動にトラやムシが大きく関わること等を見出し、その一部を生き物文化誌学会学術大会で発表した。また、動物に関する知識が社会的地位によって、大きく異なるわけではないことを確認した。研究分担者の渡辺は、東部グルン社会における家畜の疾病に関わる認識の一端を明らかにし、その成果を同学術大会で発表した。 また共同で、次年度に予定していた西部グルン社会での調査を実施し、当該社会における家畜や野生動物、ムシに関わる認識と、チェパン社会や東部グルン社会の認識との比較検討に着手した。 さらに、次年度に向けた予備調査を、カトマンズ盆地、タライ平原で実施し、それぞれの動物認識における微細な存在性、狩猟の神秘性、野生動物と家畜の境界などの問題を見出した。 文献研究として、ネパールのみならず、インド、バングラデシュや東南アジア、中国、日本などの動物認識に関わる調査も行い、それらアジア地域におけるトラを中心とした捕食者認識に関わる同一性と差異を確認した。 動物や自然認識一般に関しても文化人類学を中心に文献研究を行ったほか、積極的に学会、研究会等に参加し、動物認識に関する新たな記述、研究法を模索した。とりわけフランスの人類学者Philippe Descolaのアニミズムに関する議論やブラジルの人類学者Eduardo Viveiros de Castroの視点主義、多自然主義に関わる議論に注目し、それらの持つ可能性や問題点などを討論、検討した。現在、その成果と調査資料と付き合わせ、発表の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで順調にネパールでの現地調査、文献調査を行い、成果を上げてきているが、それに伴い、広範な動物に対する認識をどこまで追えるのか、追うべきなのか、といった問題も見出された。当面、動物に関わる知識の分布よりも、存在論的な認識を重視して調査研究をおこなっていくが、さらに研究全体の方法論や議論の方向性を明確にする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、次年度もネパールの中間山地、カトマンズ盆地、タライ平原等で現地調査を行う。橘がタルーやネワール社会の、渡辺はグルンやシェルパ社会の動物認識の調査を行う予定だが、状況によっては研究の深化を図るため、現地調査の範囲を当初の予定よりも限定することや、逆にインドやバングラデシュ等のネパール周辺国での調査も視野に入れる。調査内容としは、当面、人間と動物、野生動物と家畜の境界の問題、動物の他者性の排除と包摂といった問題に焦点を当てていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度もネパールでの現地調査に伴う機材の購入や出張費、国内外での学会発表のための出張費を中心に研究費を計上する。なお、23年度に購入予定していたノートパソコンをとりやめ、それに替わって廉価なipadを購入したため、平成23年度の研究費に未使用額が生じたが、24年度にはパソコンを購入し、調査資料の処理に用いる。
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