2012 Fiscal Year Research-status Report
大衆の法意識から見るローマ契約法の研究ープラウトゥス喜劇を素材として
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23530013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
五十君 麻里子(安武麻里子) 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30284384)
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Keywords | ローマ法 / プラウトゥス喜劇 / 法意識 / 大衆 / 契約 / 無主物先占 |
Research Abstract |
本年度は、8月に東京並びにボストンにおいて、それぞれ古典額関係の文献を渉猟するとともに、ボストンにおいてはシェイクスピア劇のみならず大衆文化であるスタンダップコメディーを鑑賞した。また9月にはロンドンにて大衆向けのコメディーや演劇、ストラットフォード・アポン・エイボンにおいては、シェイクスピア劇の中でもプラウトゥス劇の翻案である『間違いの喜劇』を鑑賞した。これらの喜劇鑑賞により、娯楽であったプラウトゥス喜劇が、何故大衆に受け入れられたか考察するための示唆を得ることができた。 また、9月にオックスフォードで開催されたSIHDA(国際古代法史学会)においては"Funny Laws. Legal Knowledge of the Audience of Plautine Comedies"と題する研究発表を英語で行った。また、25年3月に京都にて開催されたローマ法研究会においては「法律用語と日常語の狭間Pactum sunt servanda」と題して報告し、同月福岡で開催された国際ローマ法コロキウムにて"occupatio im Alltag der Roemer"と題してドイツ語で報告を行った。いずれも本研究に基づく研究発表であり、好評を得た。なお、福岡でのローマ法コロキウムは福岡工業大学西村重雄教授の科学研究費(課題番号23530024)によって開催され、報告者も主催者の一人として、学会運営に関与した。 さらに、本研究の中間成果として「ローマ大衆の法知識 ―プラウトゥス喜劇における『笑源』としての法」(『法政研究79巻3号』H.24, 12, 17. pp.209-238)発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は3回の学会報告(うち2回は国際学会)を行った他、中間成果をすでに論文としてまとめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
プラウトゥス喜劇が紀元前2世紀のローマ大衆の法知識を反映したものであることは、オックスフォードにおける研究報告でも承認された。そこで今後はさらにそこに反映された「合意」や「契約」意識に焦点を当て研究を推進したい。そのためには引き続き史料の検討を中心としつつ、古典学や演劇に目を配るとともに、研究成果を内外に発表し批判・批評が得られるようにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
9月に古代法史学会がザルツブルグ(オーストリア)で開催されるのにあわせ、世界屈指のローマ法関係資料のコレクションを有し、ローマ法研究者のハブとなっているミュンヘン大学を訪問し、研究打ち合わせ、資料収集をするとともに、学会報告も行う予定である。この他、ローマ法関係書籍や民法関係、古典学関係書籍を引き続き購入する計画がある。
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