2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530020
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10009839)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 法解釈方法 / 法解釈の技法 / 判決 / RGZ / ライヒ裁判所 / Jan Schroeder / Canaris / 評価法学 |
Research Abstract |
本年度は第1年目に当たるので、まず視座の確認をおこなった。すなわち、法解釈の技法と思考に関し日本の判決の分析から典型的なパターンを取り出し、今後の研究の指標を準備することと、法解釈の技法を考察する研究がもっとも進んでいるドイツにおける法解釈の技法の歴史、理論、実務の事例を集めることとに重点を置いた。 日本については、先に拙著『法解釈講義』で判決の法解釈方法・手法の分析をおこなったが、本年度はさらに広い範囲で関連判決を――家裁から最高裁までにわたって――集めて分析した。その成果は、A4で約50枚の論説草稿として書き上げることができた。そこでは、単に法文の拡張・縮小解釈等々の典型例だけではなく、裁判官の解釈上の思考の構造や、ratio decidendiが後の時代の判決でどう、解釈作業によって柔軟化されたり実質的に回避されたりしているかなどをも考察した。 ドイツについては、RGZ(ライヒ裁判所判決)の諸判決を、前述の指標にを参考にして検討するとともに、それらについて手がかりになる分析をおこなっているJan Schroeder, Rechtswissenschaft in der Neuzeit : Geschichte, Theorie, Methode ; ausgewaehlte Aufsaetze 1976 - 2009 を通読し、重要となる論文を3点、翻訳した。これらは近く刊行する予定である。また Canaris, Die Feststellung von Luecken im Gesetz, 2. Aufl., 1982は、「法の一般原則」の適用に関する民法の判決を多数示しながら分析を進めている。評価法学の原理的思考を考える観点からも、これを基盤に考察してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年11月までは、2010年度までの4年間にわたる科学研究費の成果発表のため、『政治の覚醒』(東京大学出版会、2012)の執筆・校正にかなりの時間を費やした。この本もまた、本年度以降の科学研究費研究にとって重要な準備作業となるものではあったが、それによって本研究の出発が遅れたことは否めない。 加えて、秋以降、早稲田法学第2巻に追悼論文、第3巻に退任教授惜別論文、法律時報に学術会議シンポ関係論文を載せる必要があった。これらの論文も、本年度以降の科学研究費研究と深く関連するものであったが、それらの執筆にかなりの時間を要し、計画通りの進行は困難となった。 さらに、まず日本の判決分析も改めて進める作業が必要だと判断して、その点での取り組みを本格化させた。 こうした諸事情のため、2011年度はドイツ研究を相当に進める予定であったが、ドイツに関する研究は、まだ不十分さが残った。これら残された課題は、2012年度中に推し進める。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、本研究に関連した基礎的資料、問題意識を共有する基本的文献の収集・解析を進める。(1)法解釈の技法に関するこれまでの実務と理論の歴史を西欧史に即して概観する課題については、本年度は、ドイツとともにアメリカにも重点を置く。(2)関連する判決を、私法・公法の各分野において収集する作業については、本年度は引き続いてドイツの判決分析を進めるとともにアメリカの裁判にも目を向ける。アメリカについては、Henry M. HartとAlbert SacksのThe Legal Process(1958)などが手がかりとなる。(判決が多い、大部の本なので、これらだけでも時間がかかると予想される。) 以上に加えて本2012年度は、時間がある限り、計画通り「法の一般原則」が実際にどう使われており、その理論的把握がどうおこなわれているかを、国際司法裁判所の諸判決、EUの欧州裁判所の諸判決などに焦点を当てて考察することによって、法解釈の技法上の一つの事例(類推・比附)をめぐって、諸分野の思考の相互連関を明らかにする作業を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予算通りで、特筆すべき変更はない。
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Research Products
(3 results)