2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530020
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10009839)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 末弘厳太郎 / 来栖三郎 / フィクション / サンデル / ロールズ / 井上達夫 / 正義論 / 法解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、第一に、『早稲田法学』90巻2号(近刊)に投稿した論文、「末弘厳太郎『嘘の効用』考――併せて来栖三郎『法とフィクション』論」(約5万字)が挙げられる。これは、本研究のテーマである法解釈の比較法的考察を遂行する過程上で、検討することが緊要と判断して本年度中に論文化したものである。すなわち本論文では、「日本・イギリス・ドイツ等ではたしてフィクションが裁判官の法解釈の技術としてどれほどの意味を持つか」の視点から、それに肯定的な末弘や来栖のフィクション論を批判的に検討したものである。結論としては、裁判官は末弘や来栖が想定しているようにはフィクションを使うことはできず、使っていると指摘されている事例において彼らがおこなっているのは、拡張解釈や法意適用などだけであること、このことは英米の法解釈についても妥当することを確認した。 また、第二の実績としては、『早稲田法学』90巻3号(近刊)に投稿した「マイケル・サンデルにおける正義と道徳――併せてロールズ・井上達夫考」(約5万字)が挙げられる。これもまた、法解釈の比較法的考察の一環として、アメリカの法実務(とくに裁判事例)における正義判断の構造を析出する中から、サンデル・ロールズ・井上達夫の正義論を批判的に検討したものである。 第三に、各国の判決を収集してその解釈手法を解析する作業は、前年度の作業の継続として進めている。これについては、まだ論文化するには至っていない。この遅れの主要因としては、上記2論文執筆を先行させたこと、および新書原稿である『マキァヴェッリ――リーダーシップ』(25万字)を書き上げる作業にかなりの時間を費やしたことが挙げられる。この原稿は一応完了したので、次年度は、上記作業を発展させるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題に結びつく、上記2論文を本年度中に『早稲田法学』脱稿し刊行を待っている状態であるから。ただし、判決の収集分析は、これらの作業もあって、当初の予定どおりには進展していない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年に当たるので、残された課題である、各国の判決から法解釈の思考を析出する作業にまとまりを付け、原稿化したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額 237,125円については、最終年度にその分の支出が予定されるので、それに備えたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度中に出版準備が整った著作について、次年度に関係者に送付しその意見を聴取するためには、相当分の経費必要が予測される。
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Research Products
(3 results)