2011 Fiscal Year Research-status Report
国際規律の形成・受容・確保に関わる統治構造理解の前提の変容と憲法的統制の再構築
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23530034
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
齊藤 正彰 北星学園大学, 経済学部, 教授 (60301868)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 公法学 / 憲法 / 条約 / 国際規律 |
Research Abstract |
本研究は、「国家間で形成され、あるいは整備が求められる法」の定立から実施までの過程を総合的かつ動態的に捉えて、その憲法的統制を考察することを目的とする。 本年度は、条約機構や実施措置の形成過程と、これに関与する国家機関の憲法的統制のあり方を探り、多層的立憲主義論にも注目しつつ、憲法および各国法制、国際法とりわけ国際人権条約、EU法について研究するという計画に基づき、資料・文献を収集・考察した。 研究の具体的成果として、第1に、単著『憲法と国際規律』を執筆し、公刊した。本書は、本研究課題が対象とする問題領域全般に関わり、平成20~22年度科研費(若手研究(B))による人権・環境・安全の領域における国際規律の検討に基づきつつ考察を深めるという本研究の計画にも準拠して、単にこれまでの研究成果を束ねるのではなく、多層的立憲主義等についての本研究の成果を大幅に加筆して完成させたものである。第2に、国際機構による実施措置の増大・高度化を考えるうえで重要な、EU法・欧州人権条約と構成国憲法の関係をめぐって、ドイツ基本法およびドイツ連邦憲法裁判所とEU法・欧州人権条約の関係についての論文を、共著『ヨーロッパ「憲法」の形成と各国憲法の変化』に掲載した(第6章「ドイツ憲法」129-149頁)。第3に、本研究課題に関わる近時の憲法学の議論の整理と展望を、国際人権法学会の学会誌『国際人権』から依頼を受けて寄稿した。第4に、国際人権条約に附随する議定書が定める実施措置として重要なB規約の個人通報制度と、立法・司法・行政の各部面での国際規律の扱いと実施措置の憲法的統制を考えるだけでは解決できない国内人権機関の問題について、多層的立憲主義の視点を踏まえつつ、論文「新たな人権救済制度がもたらす人権規範の共通化─個人通報制度と国内人権機関」を執筆し、法律雑誌に寄稿した(2012年4月27日刊行)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成20~22年度科研費(若手研究(B))による、特徴的な法規範の形成や実施措置の整備が見られる領域における国際規律の形成・実行の検討に基づきつつ、本体の条約に附随する議定書や実施措置の形成過程と、これに関与する国家機関の憲法的統制のあり方を探るという本年度の研究計画については、国家機関の憲法的統制に関して研究を十分に尽くせなかった部分はあるものの、「国家間で形成され、あるいは整備が求められる法」の定立から実施までの過程を総合的かつ動態的に捉えて、その憲法的統制を考察するという本研究の課題全般に関わる単著と共著各1冊を公刊し、雑誌論文2本を執筆しており、相応の達成度に至っていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、当初の研究計画に従い、中心的なテーマとして、国際規律の国法体系への受容段階の諸問題について検討する。条約締結の承認と当該条約の国内実施法の制定とが国会審議において区々に扱われている問題について検討するとともに、従来の条約とは性質を異にする国連安保理決議の国内的実施に関する問題についても、分析・検討を行うものとする。平成25年度についても、当初の研究計画に基づいて研究を遂行する予定であるが、進捗状況や研究状況の変化に応じて、合理的な調整を行いつつ研究の推進を図る。 ただし、平成23年度内に十分に研究を尽くせなかった国家機関の憲法的統制に関して、平成24年度当初から補充的に研究を推進している。 そして、それらの成果の一部については、学内の紀要(記念特集号)に投稿することとしており、これを目途として研究の促進を図るものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度における配分額を全額執行できていないが、これは発注済みの洋書(全10巻・約20万円)の到着が遅れて3月末に納品されたために、経理上の期日に間に合わなかったことによるものである。その後、経理等の手続を終えており、実質的には、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用するといった事態にはなっていない。したがって、研究計画の変更等、研究遂行上の対応が必要となる課題を生じさせるものではない。 平成24年度における配分額については、当初の計画に沿って、適切な執行を図るものとする。
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