2011 Fiscal Year Research-status Report
わが国を含むEU域外諸国の視点から見た国際家族に関するEU規則
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23530057
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡野 祐子 関西学院大学, 法学部, 教授 (60224044)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際家族に関するEU規則 |
Research Abstract |
2011年度は、国際家族の中でも特に国際離婚に関するEU規則の現状を、わが国を含むEU域外諸国の視点から研究した。この問題について、現有の資料および科研費助成金により購入した資料に基づき基礎調査・研究を行った。 その成果の一部は、国際私法学会発行の国際私法年報第13号にレフェリー付論文「外国離婚裁判に関する諸問題――ブラッセルIIbis規則とわが国との関係を中心に」として公表した。これは、2010年5月に国際私法学会で報告したものに、その後のEUにおける新しい国際家族法に関する動きをさらに調査し考察したものである。この論文は年報同号が「EU国際私法の最近の動向」を特集したうちの一本として掲載された。 海外での調査としては、英国ロンドンのロンドン大学およびケンブリッジ大学の図書館において、研究テーマに関する資料収集を行った。EU規則は、従来財産関係の事案において外国訴訟の差し止めを原則として認めておらず、家族法関係の事案でも同様の判断がなされると予想されている。他方、イングランドでは家族法事案において独自に発展した「Hemain差し止め」が存在している。これは相手方の外国での離婚訴訟を差し止める命令で、外国訴訟差し止め命令の一種ではあるが、期間を限定した差し止めである点において、イングランド独自のものであり、イングランド裁判所においては、EU規則発効後もこれを認めた判例が続けて下されている。今回の資料収集は、これらの差止め命令がEU規則との関係でどのように判断されるのか、またわが国をはじめとするEU域外諸国にはどのように影響するのかを研究するためのものである。研究成果は論考として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は上述のように、当初の予定通り、国際家族法に関するEU規則のうちの、特に国際離婚に関する問題を中心に調査・研究を行った。研究成果の一部として公表した論文は、国際離婚に関するEU規則について、それがわが国に及ぼす影響の視点から問題点を指摘し、今後のわが国の家族法事案における手続問題のあり方の方向性を示唆しえたと考える。その点において「研究の目的」について初年度の達成度としては、順調に達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)まずは国際離婚に関する問題を、引き続き調査・研究する。上述のHemain差し止めにつき、イングランド裁判所の判例を考察・検討し、これに対するEU諸国での反応、およびEU以外の国、特にコモン・ロー諸国での反応を調査・研究する。(2)次いで、離婚に際しての子の親権、監護権など親責任の問題につき研究する。これについては、わが国においてもハーグ子奪取条約への加盟が現実問題として浮上していることから、ハーグ子奪取条約とEU規則との関係につき、EU内で論じられている議論にも焦点を当てつつ調査・研究する。(3)さらにこれらと並行して、夫婦財産制の問題をカバーするEU規則、すなわち扶養義務に関するEU規則と、夫婦財産制に関する欧州委員会提案について基礎調査を行う予定である。 上述の調査・研究は、2011年度と同様に、購入した文献やインターネットにより収集した資料によりまずは基礎調査を行い、合わせて海外に赴き最新情報を収集・調査する方法により行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は、海外での資料収集の予定が変更になった為、次年度使用額が生じた。これについては、2012年度に、当初の計画通りの海外での資料収集に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)