2013 Fiscal Year Research-status Report
わが国を含むEU域外諸国の視点から見た国際家族に関するEU規則
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23530057
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
岡野 祐子 関西学院大学, 法学部, 教授 (60224044)
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Keywords | 国際家族に関するEU規則 |
Research Abstract |
2013年度はまず、当初の予定通り、EU域外国であり、かつコモン・ロー国としてイングランドと関わりの深いオーストラリアに焦点を当て、同国における家族法事案についての外国訴訟差止に関する判例・学説と、関連する問題として同国の家族法事案の国際裁判管轄に関する判例・学説の動向とを研究した。この研究において、オーストラリア裁判所がEU加盟国であるオランダの当事者に対し、家族法事案での外国訴訟差止命令を行っていることを確認し、考察した。ただしイングランド裁判所での「Hemain差止」とは異なる要件の下でなされていることも確認した。 またこの研究を進めて行く過程において、オーストラリアでは、家族法事案に関する国際裁判管轄および外国訴訟差止の問題は、財産関係事案についてのこれらの問題に関する判例と相互に深く関連し、互いに先例として引用していることが判明した。わが国ではこれまで、オーストラリアの財産関係事案についてのこれらの問題に関する研究はほとんどなされていない。そこで、オーストラリアにおける家族法事案における国際裁判管轄および外国訴訟差止の問題についての判例・学説を、同国の財産関係事案におけるこれらの問題に関する判例・学説との比較の視点から考察を試み、「オーストラリア裁判所の裁量権行使―Voth判決からDobson判決に至るまで―」(『法と政治』第64巻第3号 2013年11月 1-65頁)と題する論考にまとめた。 さらにEUの夫婦財産制に関する欧州委員会提案についての基礎調査を継続した。上記オーストラリアのDobson判決でも離婚に際しての夫婦財産問題は争点となっており、また、判例評釈を執筆したわが国の東京地裁平成25年2月22日判決(平成25年度重要判例解説:有斐閣2014年4月 302-303頁に掲載)においてもこの問題が関連していたことから、比較法的観点から夫婦財産問題につき考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は上述のように、当初の予定どおり、国際家族事案に関する外国訴訟差止命令についての、EU域外国での動向を研究し、オーストラリア裁判所におけるこの問題についての判例・学説を考察し、論考にまとめた。さらに夫婦財産制の問題に関するEU規則についての基礎調査を行い、EU域外国での状況として、オーストラリアにおける状況と、わが国における現状とを比較法的に考察した。これらの点において、3年目の達成度としては順調に達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度に引き続き、EU域外国において、家族法事案における外国訴訟差止命令を行っていると報告されている、もうひとつのコモン・ロー国であるカナダにおける判例・学説の動向を研究する予定である。「外国訴訟差止」という、EU規則において認められていない裁判所の命令の現状を考察することによって、EU域外国から見たEU規則の問題点を考察・検討していく。 上述の調査・研究は、2013年度と同様に、購入した文献やインターネットにより収集した資料により、基礎調査を行い、合わせて、海外に赴き、最新除法を収集・調査する方法により行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度(平成25年度)は、これまでの基礎調査に基づき論考をまとめる予定であったが、そのためには、国際家族法に関する最新の情報を学会において収集し、意見交換する必要が生じた。また、必要な文献として消耗図書費で購入予定であった図書の発刊が予定より遅れた。これらのことにより未使用額が生じた。 上記の未使用額については、2014年度に、海外への学会出張旅費、および図書の購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)