2013 Fiscal Year Research-status Report
国際取引と競争・消費者保護-食品分野における法規制を中心として-
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23530063
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
和久井 理子 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 特別研究員 (50326245)
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Keywords | 独占禁止法 / 不正競争防止法 / 知的財産法 / 国際情報交換 / 英国 / EU / 香港 / 米国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自由競争が導入され、グローバル化が進む中で、消費者が競争から公正に便益を受けることができるようにするための法制度のあり方を、食品分野に焦点をあてて検討することであり,平成25年度には,①営業誹謗行為等不公正な競争手段による排除行為の規制、②食品流通サプライチェーンにおける購買力形成及び濫用問題、③優越的地位の濫用について注目される規制・立法事例,④安全性確保・消費者保護に関する規制の公的規制の濫用事例について検討するとともに,これら規制を効果的に執行するシステムについて検討することを計画していた。これらのうち上記①の事項については,比較法的・法分野横断的検討を行った上で論文を作成し刊行した。上記②の事項及びこれと密接に関係する③の事項については,EU・英国法にかかる研究を進め,成果の共有を進めるとともに,日本法の比較法的研究及び判例研究を行うとともに,国際共同研究・共著論文の執筆を進めた。法執行システムについては,刑事罰,行政制裁,民事差止請求制度,内部告発制度,コンプライアンス制度を含む一連の法執行・遵守システムについて総合的検討を行った。そして、上記①について言及した論文中では,差止請求制度について触れた。また,公共調達における独禁法コンプライアンスのために構築された制度と運用について調査し,結果を邦語論文として刊行するとともに,英語論文公表の準備を行った。また,これら問題及び上記④の事項にかかる検討の過程で,グローバルな食品市場における遺伝子組換え食品及び技術をめぐる一連の問題を研究し,その成果の一部を論文として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年8月に怪我(頸椎・腰椎部)をし,平成25年5月頃まで計画通り行うことができなかった。その後,秋から冬にかけて若干の症状の再発があり,研究の進度を調整し海外渡航を平成25年2月から3月にするなど研究調査スケジュールの調整を実施せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成26年度は、科学研究費の交付を受けた研究課題について、これまで十分に行うことができなかった個別テーマの研究調査の推進並びに研究調査の結果公表及び総括を進める。 本研究の当初計画(平成23年度採択研究計画調書)においては、①私法上の不公正取引規制原理についての比較研究的研究、②欧州・市場統合下における不公正取引規制・消費者法ならびに食品関係法の整合化の試みについての研究、③食品の安全性確保と競争・貿易との関係にかかる事項にかかる調査を行い、④日本における食品の安全性確保にかかわる規制体系を、競争、貿易促進との関係を踏まえて立体的に明らかにしていくことを本研究の目的として挙げていた。 その後、研究調査から得られた知見に基づき、①については、競争法を含む他の法律及び不公正取引を規制する独自の法律に基づく規制についても研究し範囲を拡大した。②については、①と密接な関係があることが判明したために、①、②の両方の観点を踏まえながら研究を進めてきた。③及び④については、法執行システムの在り方などについて調査し示唆を得てきた。そして、これら事項については、既に一定の成果公表を行ってきた。他方、表示規制及び安全性確保と貿易との関係については、十分な研究を行うことができていない。WTO法についても十分に研究できているとはいえない。既公表分のアップデートも必要である。 そこで、本年度は、課題にかかわる論文の完成公表、既公表研究成果のアップデートを行うとともに、安全性確保と国際取引との関係についての研究調査及び表示にかかる独禁法上の課題のレビューに力を入れる。安全性確保と国際取引との関係については、医薬品分野における動きが先行しており、これを題材として研究し示唆を得たい。そして、これら一連の研究をWTO法をはじめとする国際貿易にかかわる協定等を意識しながら行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」に記した理由により、研究調査の内容と進度を調整したことから、図書はすでに購入した分で研究を遂行することができ、機器等についてもトナー等の消耗品であって日常的な経費として科学研究費を用いることなく購入できるものを用いるにとどめた。同じ理由から、研究補助を用いての作業は困難であったこと、及び、英文校正費用は科学研究費からの補助を受けるに必要な手続きを行うことがスケジュールにあわなかったために私費で賄ったことから、人件費を利用しなかった。 図書購入、プリンタ等の機器、研究成果の外部公表にあたり必要な研究補助、海外調査に使用する。
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