2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530074
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 岳士 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (70324738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 佳奈子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30251432)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際刑事法 / 国際司法共助 / 犯人引渡し / 国際刑事裁判所 / 国際研究者交流 スロヴェニア |
Research Abstract |
研究代表者および研究分担者は、国際刑事法に関する基本的な検討枠組みに関する情報および知見を得ることを目的として、それぞれイタリア・ギリシャ・フランス等とドイツ語圏に属する諸国の国際刑事法に関する文献・情報を収集し、分析を開始した。また、関連分野の研究を進める大学院生(岩井智美氏、越智萌氏)の参加を得て、「国際刑事裁判所判決の国内裁判に対する一事不再理効」および「逃亡犯人引渡」をテーマとする研究会を2回にわたり(平成23年5月23日および7月1日に)京都大学および大阪大学において開催し、上記具体的テーマに関する情報・意見を交換した。また、平成23年7月9日に、ヨーロッパ公法の専門家であるリューブリアーナ大学(スロヴェニア)准教授マテイ・アッチェット氏を京都大学に招いて、「ヨーロッパ統合の目的とヨーロッパ政治共同体の限界について」をテーマとする講演・研究会を実施した。 個別的には、松田(代表者)は、国際刑事裁判所に関係するものを中心に、英語、フランス語、イタリア語で書かれた図書を購入した。夏にはギリシャに赴いて現地の関連文献・情報を収集し、その内容の検討を開始した。また、国際捜査共助の要請に基づいて中華人民共和国において作成された供述調書の証拠能力に関する最高裁判決平成23年10月20日判決の評釈を公表した。 高山(分担者)は、刑事に関する国際人権法を中心とする文献を収集し、同年10月29・30日に、中国政法大学で開催された第3回「グローバル化時代における犯罪および刑法に関する国際フォーラム」に出席した。また成果の発表として、国際人権水準に関する論文La pena de muerte en Japo'n:legislacio'n y pra'cticaをブエノスアイレス大学(アルゼンチン)准教授マリア・ベロニカ・山本と共著で公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の達成目標は、「国際刑事法」を体系化し、国際的な犯罪処罰の場における理念と実効性との均衡を実現するための理論的枠組みを提示することにおかれており、その際の具体的な研究対象領域としては、国同士の国際協力の場合と、国際刑事裁判所のような超国家的刑罰権が適用される場合とを扱うことを予定していた。しかし、実際に研究を開始してみると、上記のいずれのテーマに関しても、十分な理論的検討を加えるためには、英米法および大陸法における刑事司法制度の基本的構造、個々の制度内容やこれをめぐる理論的状況についての知識を前提として、両者の共通点と差異を的確に整理することが不可欠である上に、国際法の知識も相当程度必要とされることに改めて気づかされた。また、これらのテーマに関しては、膨大な量の文献や情報が存在することが判明した。そのため、本年度中には、未だ「国際刑事法」を体系化するための理論的枠組みを確立することはできず、現在も、その前提となる資料・情報の収集・分析を進めているところである。また、とりわけ、この間、国際刑事裁判所については、「侵略の罪」の定義が行われたばかりでなく、実務の進行に伴う運営上の問題点の顕在化という展開がみられ、刑事法に関する欧州人権裁判所の動きも議論の対象となってきた。こうした最新の動向を追って調査する必要性が拡大している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においても、研究所年度に収集した資料・情報等を基礎として、引き続き「国際刑事法」を体系化し、国際的な犯罪処罰の場における理念と実効性との均衡を実現するための理論的枠組の構築のための作業を進めることにしたい。同時に、国同士の国際協力の場合と、国際刑事裁判所のような超国家的刑罰権が適用される場合に関して、それぞれ、いくつかの個別テーマに的を絞り、具体的な検討に入っていきたいと考えている。そのために、引き続き関連文献・情報を収集するとともに、国内外の専門家との意見交換の機会をより積極的に設けていくことにしたい。その際、世界レベルでの取組みと、地域的レベルでの取組みとの双方に着目し、後者については従来から国際化が最も進んでいるヨーロッパの動向についての調査・分析を続けるとともに、日本を含めたアジア地域で提起されている問題の理論的・実務的考察も視野に入れて研究を進めることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においても、引き続き、国際刑事法関連の文献・資料・情報収集を行う。とりわけ外国文献に関しては、国際刑事法関連の図書・資料だけでなく、各国の刑事法に関連する図書・資料も必要となるが、研究代表者および研究分担者が所属する大学およびその他の日本国内の教育・研究機関においても所蔵されていないものも少なくなく、新たに入手する必要がある。また、外国の関連専門雑誌については、国内に存在するものであっても、研究代表者・分担者が勤務する大学およびその周辺(関西地方)だけでは入手できないものが少なくない。そのため、東京をはじめとする他地域の大学等の研究機関に赴き、資料を複写する等する必要がある。さらに、外国における関連諸制度の内容および運用、そして、それをめぐる理論状況を正確に把握するために、研究代表者ないし分担者が、直接現地に赴いて資料を収集し、専門家や関係者から情報や意見を聴取する必要も見込まれる。あるいは、外国から専門家を招き、議論をする機会をもつ必要が生ずる可能性もある。また、若干のコンピューターないしそれに関連する機器、ソフトウェア等に関しても、情報管理の効率化のため、購入の必要が見込まれる。
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Research Products
(2 results)