2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530084
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小粥 太郎 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40247200)
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Keywords | 民法 / 情報 / システム / 責任 / 自由 / 責任財産 / 契約 |
Research Abstract |
2013(平成25)年度は、5年計画の3年目であった。2012年度は、予想以上の進捗があったが、2013年度は、ほぼ、予定どおりの成果を得るにとどまった。 具体的には、日本私法学会のシンポジウム(2013年10月、於、京都産業大学)で報告を行う機会に恵まれ、共同研究者および学会参加者から、貴重なコメントをいただくことができた。二重ローン問題を解釈論によって解決することは困難であるといわざるをえなかったが、民法における責任であるとか、責任の前提になることが何であるか、という、体系とか基礎理論にかかわる問題についての検討も行うことができたように思う。2012年度の日仏共同研究集会における自分の報告でも、情報、という角度から、責任という問題について相似する図式に出会った(同じ図式で考察することになった)ので、現在の自分自身の責任という問題に対する考えの射程の広がりと、ある程度の妥当性を検証できたことになったような気がする。私法学会報告で確認した「責任」に関する分析は、本研究の最終段階でのまとめに生かせるだろうと思う。 その他には、前記の日仏共同研究集会において、情報との関係で問題意識を得たところの戸籍(家族関係の情報ツール)について、2013年5月に、一橋大学の公開講座で講演をする機会に、戸籍という視点から、明治以来の日本の家族法制の変遷を点検する機会を持つことができた。 他には、契約法に関する論文を3件、判例研究を2件、公表した。 とくに判例研究は、1つは民事執行法、1つは破産法に及ぶ問題を検討するものだったため、システム構築という観点からすると、裾野を広げるという大きな意味があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度の末までに、公表を予定した論文等については、予定どおり公表することができた。 その他にも、具体的な研究成果(論文、講演等)を公表することができた。したがって、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、まず、日仏研究集会以来の、責任、という観点からの研究を少し進めたい。具体的には、相続という問題を通して、被相続人の債務と責任が、どのように変容していくか、を分析することを通じて、自然人の債務や責任についての理解を深めたい。 もうひとつは、情報の伝わり方、について、試行錯誤になりそうだけれども、考えを進めたい。具体的には、原発事故の前後を通じて、放射性物質に関する情報や情報に対するさまざまな評価が錯綜し、社会が混乱した。本研究は、情報に関心を寄せるものであるから、情報の適切な伝達の仕方などについて、原発事故を素材に検討したい。考察は手探りになるが、まずは、株式会社の情報開示制度、投資取引の情報提供制度など、既存の法制度にヒントを求めたい。 あわせて、最終的な研究のまとめ方についても検討したい。現段階では、自由、責任、平等、情報など、私法システムの基礎となる概念について、法学的な分析(広く実定法を見渡して、まずは、日本法の実情を浮き上がらせる)を加えていくことを考えているが、具体化と見直しを進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
比較的高価な図書とPCを発注すべきかどうか躊躇しているうちに、学内の使用期限が到来してしまった。 早々にPCを発注するとともに、2013年度、発注を躊躇した図書の発注を早々に行う。
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