2014 Fiscal Year Research-status Report
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23530084
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小粥 太郎 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40247200)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 民法 / 情報 / 民法学 / 財産 / 家族 / 人間 / 自由 / 責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
民法を体系的に研究するという観点から、いわゆる財産法の分野に属しない民法内の広大な領域である相続法の分野についての研究を行った。具体的には、「遺産共有法の解釈--合有説は前世紀の遺物か?--」という論文を公表し、当該テーマについて日本私法学会で報告を行った。また、親族法の分野についても、性同一障害者の婚姻と親子関係に関する判例解説を公表し、いわゆる財産法分野にとどまらない民法全体についての研究を継続している。 また、情報という観点からは、公示、すなわち法律関係の情報提供にかかわる問題について、いくつかの研究を公表した。具体的には、上述の相続法の研究(不動産の公示に関係する)に加えて、不動産登記の中間省略登記請求に関する判例解説を公表した。また、債権譲渡の公示制度についての立法論的検討に関する論文を公表した。 さらに、民法・民法学の基礎にかかわる「制定法と判例法」という論文を公表することができた。 ほかにもいくつかの論考を公表したが、本欄においては省略する。 本研究計画との関係でもっとも大きな成果は、他の民法研究者(1名)と共同で、民法学そのものに関する著書の出版を計画していたところ、2014年度内に脱稿することができたことである。これによって、著作を、2015年度中、遅くとも2016年度中には出版できる見通しが立ったと考えている。当初の研究計画との関係では少し方向が変わったけれども、民法・民法学を包括的に考察するという基本路線の範囲内で、それなりの成果を公表することができそうなので、少し安堵している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に記載した論文に加えて、未公表だが著書の原稿を脱稿できたことが、おおむね順調に進展しているという評価の大きな理由である。 民法総則・物権法・債権法の分野だけでなく、親族法・相続法の分野についても勉強し、研究成果を公表する機会を得たことは、積極的に評価することができる。また、制定法と判例法という基礎法にもかかわる分野についての研究成果を公表することができた点も、体系的研究という観点からすると積極的に評価することができる。さらに、民法学そのものについて考える著作の原稿を脱稿することができた点も、積極的に評価することができる。 しかし、情報という観点からすると、権利義務関係の公示という側面ばかりに研究が集中してしまった点は不十分である。また、制定法と判例法というテーマにしても、公表した内容の他にも、書くべきことがあったと考えている。さらに、体系という観点からすると、民法学全体について考える機会を持ち、原稿を書いたことはよいことだったが、回り道をしているような気もする。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」欄に記載した著書の公表に向けて、着実に作業を行いたい。 また、民法・民法学を包括的に研究するという観点から、ひきつづき、民法・民法学の基本概念についての研究を進めたい。 具体的には、民法の体系的研究という観点から大きな業績を残した広中俊雄博士の民法解釈論について、包括的な研究を試み、その成果の少なくとも一部を公表する予定である。また、体系という観点からするなら、人格権はそのキーワードの1つとなるところ、これまで、民法総論・総則、不法行為法、家族法において語られきた人格権が、担保物権法においてどのようにあらわれてくるのかについて検討を試み、その成果の少なくとも一部をある研究集会で報告する予定であり、論文としてまとめることになっている。さらに、制定法と裁判ないし判例法の境界線には、一般条項が存在するけれども、信義則・権利濫用などの一般条項について研究を行い、公表の準備をする。さらに、第二次大戦後の民法の体系を考察する上で重要と思われる民法1条1項、1条の2についても研究を行い、公表の準備をする。 さらに、債権法の改正が現実のものとなりそうであるところ、改正法が成った場合にはそれについて個別の研究を進めるとともに、改正法をやや形而上学的見地から、経過措置という問題を手掛かりに考察することも行う予定である。
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Causes of Carryover |
2014年度は、体調を崩すなどしたこと、学内外の事務的な用務に時間をとられたことなどから、研究活動に投入できる時間が減少し、予算執行もやや滞ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画実現のため、早期の執行に努力したい。 2015年度は、10月に、韓国ソウル市において研究報告の機会を得る見込みなので、出張旅費を科研費で支弁したい。
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