2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今井 克典 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30283055)
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Keywords | 社債管理者 |
Research Abstract |
考察の対象となる会社債権者として、前年度に引き続き、社債管理者と、会社に貸付債権を有する社債管理者とを採り上げた。社債管理者が自己の債権を回収し、社債管理者に損害が生じた場合に、社債管理者が社債権者者に対して負う責任の内容について、社債管理者の義務の内容から分析し、また、生じうる具体的な問題について考察した。 社債管理者が債権回収を行う場面で問題となる責任の内容については、従来より見解が分かれているが、大別すると、倒産法における否認との関連性を見い出す見解、誠実義務違反に基づく損害賠償義務に根拠を求める見解、受領した弁済金の分配義務に根拠を求める見解がある。とくに近年改正がなされた倒産法との関係、社債管理者がその責任に基づき賠償すべき社債権者の損害の内容等からは、否認との関連性を見い出す見解と分配義務に根拠を求める見解を採用するは困難である。 そこで、誠実義務違反に基づく損害賠償義務に根拠を求める見解に基づいて、その誠実義務の内容に検討を加えた。社債管理者の免責が認められる場合があるが、そのような場合を踏まえると、従来の見解のように、債権の回収それ自体について誠実義務違反の存否を問題とするのは妥当ではなく、端的に社債管理それ自体について誠実義務違反の存否を問題とするのが妥当である。 このような結論ともとに、具体的な問題として、社債管理者による本旨弁済の受領、社債管理者の債権と社債権との期限の利益喪失、社債管理者の約定辞任について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的として、会社の規整を通じた会社債権者間の利害調整について、その法的構造を明らかにすることをあげている。現在、社債権者と債権者である社債管理者とを採り上げて、両者の関係について研究を進めている。そこで、両者間の利害調整をする会社法の規整を分析している。 今年度は、前年度までの研究を踏まえて、両者間の利害調整の1つの仕組みとして、誠実義務を導き出すことができ、また、誠実義務の内容についても、一定の検討を加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、会社の債権者として、社債権者を採り上げてきた。このような社債に関す考察を踏まえつつ、社債権者集会について考察する。社債権者集会が開催されるのは、会社の財務状況が悪化した場合である。社債権者集会は、会社の存続により将来の支払を求めるために、社債権者の権利や権利の行使に制限・変更を加えることがある。そこで、社債権者集会の権限、社債権者の権利や権利の行使の制限・変更等について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、第一に、会社法資料・倒産法の資料・銀行関連法の資料等の収集の費用に使用する。 第二に、資料収集・整理のための謝金に使用する。 第三に、他の研究者との意見交換の旅費、情報収集のための旅費に使用する。
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