2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
今井 克典 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30283055)
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Keywords | 社債 |
Research Abstract |
考察の対象の中心となる会社債権者として、社債権者を採り上げた。また、考察の対象となる場面として、会社の財務状況が悪化し、会社が倒産を回避してその再建を模索する場面を採り上げた。 会社の支払能力に不安が生じる場合には、各会社債権者の間では、会社の倒産による即時の債権回収と、より多額の債権回収を期待して会社の再建の可能性の模索との選択について、意見の対立が生じうる。会社の再建に向けては、財務状況の改善のために、債権の減免の当否で、また、減免をするのであれば減免の額で各会社債権者の対立が生じうる。 社債権者については、多数存在することが多い。会社の再建を選択する場合には、各社債権者に対して、会社の再建に向けた同一の行動をとることを期待するのは難しい。そのため、会社法においては、社債権者集会の制度が用意されている。社債権者集会の制度は、社債権の管理・処分について、社債権者集会の決議によって、異なる意見の社債権者の社債権も含めて、社債権について一定の管理・処分を可能にする。 近年、社債権者集会の決議によって、社債の元本・利息の減免をすることができるとする見解が主張されている。しかし、社債権者集会の制度の沿革からは、減免を認めてきたとはいえないと考えられる。また、会社再建に向けては、会社債権者の多くが再建に向けた行動をとることが必要であるが、社債権者集会は、社債権者と社債権者以外の会社債権者との間の利害調整・意見調整をするわけではない。一方、会社の再建が必ずしも成功するとは限らず、減免後に倒産手続きが開始すると、社債権者は、減免された額に基づいて、倒産手続きに参加することとなる。 したがって、倒産手続きの前に、社債権者集会の決議により、社債の元本・利息の減免という社債権の縮減をすることができると解するのは妥当ではない。
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