2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530107
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
岡 孝 学習院大学, 法学部, 教授 (10125081)
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Keywords | 高齢者保護 / 成年後見 / 法定後見 / 任意後見 / 国連障害者権利条約 / スイス成年者保護法 / 国際研究者交流(韓国、台湾、中国) / 国際情報交換(ドイツ、スイス、オーストリア) |
Research Abstract |
東アジアにおける成年後見制度について、一方では、日韓台湾の新制度を比較しつつ、中国の研究者と共同で中国成年監護制度私案を作成しようとし、他方で、韓国、台湾、さらにはヨーロッパの近時の改革を参考にしながら日本の成年後見制度を再検討しようというのが、本研究の目的である。研究の過程で、とりわけ韓国法から多くの示唆を得た。なかでも能力制限を伴わず、かつ一時的なニーズに応えようとする「特定後見」は日本法の改革に参考になろう。中国成年監護制度私案については、最終年度になっても、中国の共同研究者との意見の調整ができず、私案の完成はできなかった(方針を変更し、日本成年後見制度の改革の提案はしてきたいと考えている)。 最終年度には、ドイツ(フライブルク世話官庁、マンハイム区裁判所など)・スイス(チューリヒ市成年者保護庁)での調査も行った。とりわけスイス法から任意後見について多くの知見を得ることができた。この分野のスイス法の特色は次の通りである。①低コスト。本人の判断能力を確認するために、原則は自筆による「事前支援委託書」の作成とする(別に公正証書による作成も可能)。②委託は契約ではなく単独行為。③本人の判断能力が喪失したならば、成年者保護庁は、「事前支援委託」書が作成されている場合には、そこに記載されている受託者(多くは親族)の意思を確認する。受託者が拒否すれば法定後見を発動させる。これに対して受託者が承諾すれば、受託者に代理権がある旨の証明書を発行して活動させる。ここで注目すべきは、市民向け一般啓蒙パンフレットには「事前支援委託」として「請求書の支払」のほか、「猫の世話」「書類の整理」など事実行為も例示されていることである。日本の身上監護の内容をどのように考えるべきかを再検討する際の手がかりとなろう。さらに、「事前医療指示」、成年後見人の担い手・その権限についてもスイス法は参考になる。
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