2011 Fiscal Year Research-status Report
デジタル・フォレンジックの必要性と今後の法制度/訴訟に与える影響の研究
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23530123
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
須川 賢洋 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (40282967)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | デジタル・フォレンジック / eディスカバリー / 電子証拠 / 証拠保全 |
Research Abstract |
研究一年目である今期は、基礎研究に重点をおいた。 さらに「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」として刑法のコンピュータ犯罪関連の条項が改正されたため、先にその部分を重点的に研究することとなった。本改正では、「ウィルス作成罪」の新設や、刑事訴訟法においてコンピュータや「ネットワーク上のデータを差押え・証拠保全するための規定」など、まさにデジタル・フォレンジックに直結する条項が盛り込まれた。それ故、その部分の研究を優先的に行った。とくに、この法改正が、実際に作業を行う現場のエンジニアに与える影響について考察したものである。 その一部成果は平成24年2月10日の「情報処理学期 第55回電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP)」にて『「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部改正」に関する一考察』として、発表および論文掲載を行った。 また、申請者が参加している「デジタル・フォレンジック研究会」にて『証拠保全ガイドライン』の改訂に共同で携わり、平成24年5月に『証拠保全ガイドライン(第2版)』として公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」に関する研究、証拠保全ガイドライン作成にあたっての法的視座からの考察などの研究の進展があった。しかしながら、当初想定していたより法改正や改訂の時期が早くなったため、こちらの研究に重点を置いた結果、計画策定時には先に行うつもりであった、デジタル・フォレンジックツールに関する法的視座からの検証やISO27000との関連の調査などが多少遅れている。2年目はこれに重点をおくつもりである。 言ってみれば、2年目の作業予定と1年目の作業予定の順序が一部入れ替わった形になっている。全体としては一定量の進展が見られるので概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは以下の三点について優先的に研究を進める。 (1)デジタル・フォレンジックツールを実際に使ってみての調査。調査の後に訴訟などが行われる場合を想定した上で、ツールを実際に使ってみて、国内での法制度との間に問題がないかと検証したい。また、これらのツールを扱うの者が技術者であることを前提に、後々の法的な手続きに問題が出ないようにするにはどのような手順を取る必要があるかの資料ともする。 (2)改正不正アクセス禁止法の研究。デジタル・フォレンジックに関連する重要な法律の一つである不正アクセス禁止法が平成24年3月に改正され、5月から施行される。よってこの法改正が及ぼす影響を調査することは急務となる。 (3)ISO:27000との関連性の研究。電子証拠に関する国際規格であるISO:27030番台が2012年ないしは2013年中には正式に認可されるはずである。これがデジタル・フォレンジックに及ぼす影響や国内法・国際法との関係を調査研究する。 また、スマートフォンへのデジタル・フォレンジックに関する研究の比重を大きくする予定ある。周知のとおり、現在、スマートフォンが急速に普及してきており、その結果、コンピュータにおける様々な問題も、PCやサーバで起きる場合からスマートフォンで起きる場合にシフトしてきている。よって今後、スマートフォンでのデジタル・フォレンジックに関する法的問題をその研究対象として重く捉える必要があると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記「今後の研究の推進方法」で書いたとおり、デジタル・フォレンジックツールの検証、スマートフォンへの影響などを調査研究の対象とする予定である。よって、それらに必要なハードウェア/ソフトウェアなど関する経費として使うことを予定している。 前年度の未使用額のほぼ全額を既にこれらの機器の為に発注済みであり、実証を行った上で、さらに必要であれば、追加の調査費や購入費とする。 また2年目は研究内容に幅を持たすため、IT専門家への聞き取り調査や専門的知識の提供を受けることを予定している。その為の経費として使用する。
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