2013 Fiscal Year Annual Research Report
環境と開発における先住民族の法的地位の再検討-国際法形成過程変容の多面的考察
Project/Area Number |
23530129
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
松本 裕子 (小坂田 裕子) 中京大学, 法学部, 准教授 (90550731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 友彦 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (20378508)
坂田 雅夫 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (30543516)
遠井 朗子 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (70438365)
落合 研一 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 助教 (80605775)
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Keywords | 先住民族 / 国際人権 / 国際環境法 / 開発 / 国際経済法 / アイヌ / 憲法 |
Research Abstract |
1. 人権法以外の国際法の文脈でも、先住民族の権利への一定の配慮がおこなわれる現象がみられる。具体的には、国際環境法・国際開発法・国際経済法において、先住民族が影響を受ける可能性のある国際規範の定立への先住民族の参加が認められる場合があり、程度の差はあるものの、規範の実施において先住民族の権利尊重の必要性が認識されるようになりつつある。ただし、個別のレジームを超えて、国家中心的な伝統的国際法が構造転換したといえるかについては、現状ではそれを肯定するに十分な実行の積み重ねはない。 今後、個別レジームにおける実行の積み重ねがいかに進み、それが国際法一般にどのような意味をもつかについては、検討課題として残されている。 2. 国際法上の先住民族の権利の日本国内への影響については、行政への一定の影響は認められる。具体的には、国連宣言採択を受けて、国及び一部の地方自治体において、公文書・政策文書への一定の反映や政策決定の正当性の根拠とする動きはある。ただし、地方自治体レベルでのそのような動きは、アイヌ民族が一定数以上存在し、アイヌ政策の担い手となっている一部の自治体に限定されており、自治体ごとの意識のばらつきがある。その一方で、国連宣言の採択が国及び地方自治体の既存の政策の根本的変更を招くような状況は存在していない。また、自治体によっては、国際義務は国の問題との認識があり、概して、自らが国際義務を負っているという意識は乏しいように思われる。 3. 本プロジェクトは、国際法学及び憲法学において先住民族研究が周辺化しがちな傾向を問題視し、その裾野を広げ、より広くに関心をもってもらうという目的を有していた。本プロジェクトを通じ、この目的は一定程度、達成したが、むしろそれは出発点にようやく立ったことを意味する。本プロジェクトは一区切りするが、今回、明確になった問題点を継続的に検討する予定である。
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Research Products
(6 results)