2011 Fiscal Year Research-status Report
生存権のジェンダー分析――若い女性への支援法の構築
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23530130
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
若尾 典子 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (70301439)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 子ども福祉 / ウィーン |
Research Abstract |
本研究の目的は、「若い女性」を社会的支援の対象として検討することである。10代・20代の女性はジェンダー平等政策からも、子ども支援政策からも、支援の対象となりにくい現状がある。ようやく最近は、若者支援が社会的学術的関心となってきたが、この領域でも、若い女性が抱える問題への検討は進んでいない。このような研究状況にたいし、本年度は、「研究計画」にそって、ドイツ・オーストリアにおける若者支援に関する文献の収集に努めた。ただ、子どもと成人の境界にある「若者」、それも若い女性への支援という問題意識はドイツ・オーストリアにおいても、先行研究は少なかった。 しかし、とくにウィーンは、子ども福祉について、20世紀初頭から、ヨーロッパのなかでも先進的な取り組みをしてきており、「ウィーン方式」として有名である。したがって、ドイツおよびオーストリアを比較研究の対象とするより、ウィーンに限定して検討することの重要性が明らかになった。 ウィーンを比較研究の対象として限定する以上、日本の歴史的検討が必要となる。そのため、研究実施計画では平成25年度に予定していたが、今年度において、すでに日本の戦後史における若い女性の問題の検討も行った。そして、日本では、戦後の著名な憲法判例において、家族と少女の暴力的関係が明確になっていたにもかかわらず、少女への支援という課題が浮上しなかったことを、明らかにした。すなわち、憲法25条が明記する「社会福祉」への関心は、戦後日本において、1990年代になるまで、比較的低かったのではないか。社会福祉士が国家資格となるのは1987年であり、女性運動がDV支援に取り組むなかで、初めて社会福祉政策の重要性が社会的に共有されてきたように思われる。これにたいし、なぜ、ウィーンでは社会福祉への関心が高く、かつ行政レベルで展開されたのかが、次年度の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展していると評価する理由は三点ある。 第一に、当初の研究実施計画にしたがい、ドイツおよびオーストリアの文献収集を行ったことである。第二に、この文献収集の結果、ウィーン方式の重要性が明確になり、当初、研究実施計画で予定していたドイツにおける調査は行うことはなったが、次年度の課題をより明確にしたことである。そして第三に、研究実施計画では平成25年度に予定していた日本の検討を、今年度に行い、比較研究の課題を明確にした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ウィーンでの在外研修が可能となったため、今年度の研究成果を踏まえて、ウィーンの子ども福祉の歴史的展開と現状を把握することに努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、予定していたドイツにおける若者支援に関する研究を、文献の検討の結果、対象から除外したため、次年度使用予定の研究費が生じた。しかし、今後は「ウィーン方式」といわれるウィーン市の青少年局を中心とした子ども福祉への取り組みを、歴史的にも検討することとなったため、その文献収集や現地調査のために、研究費を使用する計画である。
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Research Products
(1 results)