2013 Fiscal Year Annual Research Report
生存権のジェンダー分析――若い女性への支援法の構築
Project/Area Number |
23530130
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
若尾 典子 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (70301439)
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Keywords | ジェンダー / ソーシャルワーカー / 社会福祉 |
Research Abstract |
最終年度は、生存権をジェンダーに敏感な視点から検討することの必要性について検討した。生存権は、憲法学においては立法裁量との関係で議論されている。最高裁判決も司法審査権を完全には否定しないが、予算との関係、基準の定立の困難さなどから、立法裁量を大幅に認める。実質的には、国会が生活保護法を制定している以上、憲法上の検討の余地はもはやない、ということであろう。 これにたいし本研究は、生存権保障の確保を、25条2項の「社会福祉」の課題として検討した。社会福祉という用語は、憲法25条2項によって初めて日本に登場した新しいものである。にもかかわらず社会福祉は、憲法上の検討対象とはみなされていない。その理由は、戦前の社会事業と同じものという認識が維持されたことと、ケースワークであるため、法的な規制になじみにくく、まして憲法の対象ではない、という認識にあった。しかし、社会福祉が戦前の社会事業と異なることを明確にすることこそ憲法学の課題である。また社会福祉担当者の個人的な対応によって、重大な人権侵害が放置されてきた事実は無視されるべきではない。英米では憲法上の根拠がないにもかかわらず、ソーシャルワーカーは人権の担い手として位置付けられている。日本で社会福祉は憲法上の根拠をもつ以上、より一層、個々の社会福祉担当者の裁量に委ねることのないシステムの構築が必要である。具体的な生活保障であるだけに、ジェンダーに敏感な視点が必要となる。この点は25条を24条と連動させて解釈することの重要性も提起する。深刻化する「若い女性の貧困」は、一つには親、とくに母親の精神的・経済的貧困によっており、貧困・暴力の連鎖が生じている。いま一つには女性の就職困難である。この問題解決には、憲法上、社会福祉をジェンダーに敏感な視点から位置づけ、既存の社会資源を活用して若い女性の社会的排除を阻止するシステムをつくることである。
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Research Products
(2 results)