2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530133
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
諏訪野 大 近畿大学, 法学部, 准教授 (60368280)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | テレビ番組フォーマット権 / 知的財産 / 放送 / 契約 / 不法行為 |
Research Abstract |
今年度の目標は、研究実施計画に記載してあるとおり、テレビ番組フォーマット権を取り巻く実情の的確な把握にウエイトを置き、次年度以降における継続的な実情の把握、およびテレビ番組フォーマット権に関する法的考察をするにあたって方向性を確定するための基礎作りを行うことであった。 その目標を達成するため、テレビ番組フォーマットというものが、一体どのようなものであるのか、また、それが実際にどのように取引きされているのか、さらに、法律関係が不明にもかかわらず、多大な金額が飛び交う取引きが先行している現状において、そのような状況の中でも、どのような法的アプローチを採ってテレビ番組フォーマット権を保護しようとしているのかという実情の調査を目的として欧州への出張を行った。 世界的な法律事務所Ashurstでの研究会発表における英国弁護士や日本の英国駐在官僚との懇談、英国の大学の研究者との面談、世界中の知的財産法の研究者が集うALAI参加などを通して、本研究の概要や趣旨を説明した上で、今後の協力を要請し、承諾を得ることができた。 世界最大のテレビ番組マーケットであるMIPCOMへの参加し、多くのカンファレンスへの出席を通じ、テレビ番組について幅広い議論触れ、加えて、FRAPAの次期レポートのプレス発表であり、テレビ番組フォーマットの取引についての最近の動向および今後の方向性が指し示され、本研究にとって最重要情報の収集ができたことは最も有意義であった。 さらに、MIPFormatsに参加し、現在のテレビ番組フォーマット権の法的保護の最新情報を取得することができた。また、FRAPAの事務局長と面談をすることができ、今後の研究活動に対する支援を要請することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、次のとおりである。直接的な法的保護を受けていないにもかかわらず、欧米を中心に、巨大マーケットを形成しているのが、"テレビ番組フォーマット権"である。しかし、わが国では、その法的性質等についてほとんど議論されていない。テレビ番組フォーマット権が財産的価値を有するということは明らかであるが、現行の知的財産法体系に含まれず、それが実際にどのようなものを指しているのか、そもそも権利であるのか法的にはまったく不明瞭である。そこで、欧州における議論を参考にしながら、わが国の法体系におけるテレビ番組フォーマット権の位置づけを明らかにすることを本研究の目的とする。 また、本年度の実施計画は、テレビ番組フォーマット権を取り巻く実情の的確な把握にウエイトを置き、次年度以降における継続的な実情の把握、およびテレビ番組フォーマット権に関する法的考察をするにあたって方向性を確定するための基礎作りを行うため、欧州への海外出張を行い、テレビ番組フォーマット権取引の現在の世界的潮流を把握することであった。 上記の研究実績の概要で記載したとおり、欧州出張を通して、テレビ番組フォーマット権取引の現在の世界的潮流を把握できたと思われ、本研究の目的の達成度については、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究実施計画では、テレビ番組フォーマット権を取り巻く実情の把握を継続しながらも、法的考察も徐々にすすめ、そのため、海外の文献に基づく研究に重点を置きながら、MIPへの参加等を通して、実情の継続的把握と最新動向を調査し、結果を法的考察へフィードバックすることとしている。 したがって、欧州へ積極的に出張し、MIPへの参加、関係組織への訪問、欧州の大学の研究者との面談、資料の収集などを引き続き行う。 本研究は、単に、欧州の動向を調査研究することで満足するものではなく、テレビ番組フォーマット権が、わが国の法体系においてどのように位置づけられるのか、そして、どのような法的保護を受けることができるのかを明らかにすることが当然に含まれている。そのため、わが国におけるテレビ番組フォーマット権の取引き状況を把握するために、東京への出張を通じて、民放連等にアプローチをしてみたいと考えている。 また、著作権を侵害しない行為について、控訴審が認めた不法行為の成立を覆した平成23年12月8日の最高裁判所判決を検討し、その射程がどこまで及ぶのか、そして、テレビ番組フォーマット権を考えるにあたって、どのような影響を持ちうるのかにつき考察を加えてみたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じた状況は次のとおりである。本研究に関し科学研究費の採択を望んだ最大の理由の1つとしてMIPへの参加があるが、そのMIPにおいてテレビ番組フォーマットを集中的に取り扱うMIPFormatsが平成24年3月末に開催されることになり、その時点での残額11万円余りでは旅費としてまったく不足していたため、翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用としたものである。 次年度の研究費の使用計画についても、旅費がその中心となる。上記の「今後の研究の推進方策」に記載したとおり、次年度においても、MIPへの参加をはじめ欧州への出張を企画しているほか、わが国のテレビ番組フォーマット権の取引き状況を把握するために東京への出張も行う予定としてるからである。 また、継続的なテレビ番組フォーマット権に関する情報の提供を受けるために、FRAPAのメンバー登録のための支出を行う予定である。
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