2014 Fiscal Year Research-status Report
16世紀スペインにおける恩寵と自由意志―「もう一つの社会契約説」の展開
Project/Area Number |
23530152
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
松森 奈津子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (80337873)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | サラマンカ学派 / 国際法 / 万民法 / ビトリア / スアレス / グロティウス / 初期近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、16世紀スペインにおける後期サラマンカ学派の政治理論に着目することによって、国家理性論や社会契約説に偏った従来の西洋初期近代理解を修正するという全体構想の一部である。具体的には、政治的諸問題が論じられる際の基盤となっていた恩寵(神の意志)と自由意志(人間の意志)の関係をめぐる諸議論を検討する。その目的は、第一に、恩寵論争と忠誠宣誓論争を主軸として展開された16世紀後半期スペインの世俗権力論の全体像を明らかにすること、第二に、社会契約説に代表される同時代の主流理論との異同を考察することにより、その地位と意義を模索することである。 この二つの目的を達成するため、今年度は、とりわけ第二の分析軸(忠誠宣誓論争)に関連する諸議論を敷衍し、サラマンカ学派の秩序構想を、国際法秩序形成の系譜というより広い視野に位置づけて再検討した。 具体的には、後期サラマンカ学派が多大な影響を受けている前期サラマンカ学派との異同を明確にするため、あらためてビトリアに代表される16世紀前半期の理論的特質を英語の二論文としてまとめた。また、これを批判的に継承した16世紀後半期の理論展開について、スアレスやモリナに注目しながら、口頭報告一編、共著論文一編の形で公にした。以上により、前後期サラマンカ学派の世界観、万民法概念の特質が詳細に検討され、中世から近代にかけての重要な転換点を準備したその独自の意義が明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度については、当初は平成25年度に収集・読解した資料に基づき、忠誠宣誓論争に関連する諸議論についての草稿を執筆する予定であったが、予定していた大部分を前年度に終わらせることができた。したがって、当初予定よりもさらに一歩進め、サラマンカ学派の秩序構想を国際法秩序形成の系譜というより広い視野に位置づけて再検討することができた。 したがって本研究は、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度については、当初予定通り、恩寵論争と忠誠宣誓論争という二つの分析軸を統合した最終成果発表を行う予定である。分析の中心となるのは、王権と恩寵によって神から直接授けられたものとみなすジェイムズ一世の論理と、王権に正当性を与えるのは人々の自由な合意だとするスアレス、ベラルミーノの理論である。彼らの論理を、中世から近代にいたる国家論の変遷という文脈に位置づけ、その意義を提示する。主な対象相手となるのは、中世思想を代表するアウグスティヌス、トマス、アゾ、カイェタヌス、シルヴェストリと、近代思想を構築したマキアヴェッリ、ボダン、グロT牛、ホッブズ、ロック、スピノザである。
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Causes of Carryover |
今年度は若干の残額が生じたが、これは絶版の貴重図書の購入が進まなかったこと、英文ネイティヴチェックが分量割引により予想よりも少額の執行で収まったこと、による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は最終年度となるため、今年度の繰り越しと来年度の受け入れ額を合わせて執行し、研究を完結する予定である。とくに、貴重図書の購入が最終的に困難となった場合には、図書館等の閲覧、複写等でこれを補足する。
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Research Products
(4 results)