2012 Fiscal Year Research-status Report
国際紛争の和平交渉と仲介外交―タジキスタン事例研究から包括的理論構築へ
Project/Area Number |
23530207
|
Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
伊地 哲朗 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (90512963)
|
Keywords | 国際情報交換、タジキスタン、アメリカ |
Research Abstract |
本研究の二年目に当たる平成24年度には、当該研究課題の目的を達成するうえで不可欠な海外調査の大部分を完了することが出来た。なお本研究の主たる目的は、1)タジキスタン内戦の和平交渉と仲介外交に関する事例研究の完成、および2)国際紛争、特に内戦形態の武力紛争をめぐる和平交渉と仲介外交に関わる包括的理論構築の基盤づくり、であるが、双方に関連した海外調査を実施した。まず1)に関しては、24年8月下旬から9月初めにかけて、タジキスタン現地で計10名を超える政府側および反政府側の交渉団のメンバーに聞き取り調査を実施することが出来た。和平交渉に参加した実務家に直接話を聞くことで、交渉プロセスに関する事実確認や疑問点の解消、および意見交換の機会を得ることができ、文献研究では得られなかった情報や視点を発見することが出来たと考えている。 24年12月下旬から25年1月初旬には、アメリカ在住の実務家や研究者を対象とし、聞き取り調査と意見交換のための面談を実施した。タジキスタン内戦の和平交渉に仲介者として関与した元国連関係者や元米国政府関係者から、1)の研究目的に鑑み、貴重なアドバイスと情報を提供して頂いた。また2)の研究目的に関しても、ジョージ・メイソン大学や米国平和研究所、ジョンズホプキンズ大学などの研究者との意見交換を通じて、仲介外交の理論研究の動向に関する理解を深めることが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、タジキスタン内戦の和平交渉と仲介外交に関する事例研究の完成、および内戦の和平交渉と仲介外交に関わる包括的理論構築の基盤づくり、という二つの主要な研究目的を達成するうえで、再重要と位置付けていた海外調査を成功裏に終えることが出来た。またその中で、本研究の具体的テーマ、1)主権国家、国連、地域機関、非政府組織など様々なアクターの仲介的役割、2)そうした多種多様な仲介者間の連携・調整、3)国際的仲介のタイミング、4)国際的仲介案の合意形成、の全てを分析の射程に入れることが出来たのは、研究計画二年目にして一定の成果であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度実施した一連の海外調査の成果や、また前年度タジキスタンから招聘した専門家との意見交換から得られた知見などを統合しつつ、タジキスタン内戦の事例研究を完成させると同時に、そこから得られた知見に立脚しつつ、内戦終結における交渉と仲介の役割に関する理論構築の基盤づくりをさらに推し進めたい。具体的には、タジキスタン事例研究を、国際交渉・仲介を中心的テーマの一つとして取り扱っている査読付き学術書シリーズからの単著の形で上梓することで、これまでの研究成果を集大成として発信することを目指したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はほぼ計画通りに研究費を使用したと考えているが、「次年度使用額」として約17万円程度の研究費が生じている。それを含めて、次年度には約97万円の直接経費使用を見込んでいる。単著執筆過程で生じる書籍や関連資料の購入費や、追加的な情報収集を目的とした国内外の調査出張のための経費などが、その主要な使途として見込まれる。
|