2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530261
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安部 由起子 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50264742)
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Keywords | 非正規雇用 / 所得分配 / 地域 / 産業構造 |
Research Abstract |
2012年度中に公刊した論文("A cohort analysis of male labor supply in Japan")では、正規雇用・非正規雇用について、男性の雇用が1982年から2007年の間にどのように変化したかを実証的に示した。その際、非正規雇用者のなかでの雇用形態の違い、および産業の分布についても着目した。 学会報告(2件)を行なった論文は、女性就業の地域差に関する論文である。日本のなかで、女性の就業率には大きな地域差が存在し、とりわけ地域(山形県・新潟県・富山県・福井県・石川県・鳥取県・島根県)において女性の就業率は顕著に高い。この研究は、正規・非正規雇用の違い、および学歴別の就業行動の違いについても着目している。2007年のデータを用いた実証研究を行なった結果、各種の需要・供給要因では、地域差を説明できないことがわかった(この結果についてまとめた論文は、現在国際雑誌に再投稿中である)。一方、一時点のデータによる分析では、女性就業の地域差の原因を明らかにするのは困難であるとの結論に達したので、それがどのくらいの期間、現在のようなかたちで存在したのかを追究するため、1930年以降の歴史的なデータの分析を開始した。この研究は、Giorgio Brunello教授(イタリア・パドヴァ大学)との共同研究である。 もう1件の学会報告を行なった論文(“Occupational choice and labor force behavior of women in Japan”)は、女性の就業の職種構成に関するものであり、これは臼井恵美子准教授(名古屋大学)との共同研究である。既存研究ではあまり注目されてこなかった、女性の職種に関するコーホート別の推移を検証したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
女性就業の地域差に関する研究論文は、日本における女性の正規雇用・非正規雇用の地域的な状況を明らかにしたもので、既存の研究ではあまり分析されてこなかった視点を提供できたのではないかと考える。その研究成果をまとめた論文は国際雑誌で複数回の改訂を行ない、現在その結果を待っているところである。また、この研究成果は学会や研究会でも報告しており、この論文の完成度はそれなりに向上したと考えている。 女性就業の地域差に関しては、Giorgio Brunello教授(イタリア・パドヴァ大学)との共同研究の成果を、国際学会での報告に応募し、採択された。平成25年度中に学会報告を行ない、研究の充実と深化を図る予定である。この研究を通じ、時系列的な変化についても一定の研究成果を得ていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年にはサバティカル研修を6か月間取得し、海外の研究機関に所属する研究者との交流、および国際学会への参加を予定している。その間、共同研究者が所属する期間に長期滞在するとともに、国外の研究機関を訪問し、本課題の成果である研究の報告や情報交換を行なう予定である。サバティカル研修期間にヨーロッパの複数の研究機関を訪問することを予定しており、すでに滞在についての内諾を得たうえで準備を進めている。その時期には、共同研究者との研究を進め、論文にまとめて投稿をすることを予定している。さらに、本研究の成果である論文の発表等をするために、平成25年度中に米国で開催される国際学会への参加が決定しており、こちらについても準備を進めているところである。これらの機会を通じて研究の改善・深化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題の研究成果を海外学会等での研究報告すること、および、海外研究機関への数か月にわたる滞在を予定しており、そのための国際旅費や滞在費を支出する予定にしている。 平成24年度中に、女性就業の地域差に関して歴史的研究を開始する機会があった。その研究の発表を、アメリカで開催される2つの国際学会に応募することになり、24年度中に報告の応募を行ない採択された。さらに、平成24年度中に、25年度中に6か月間サバティカル研修を取得し、その間にヨーロッパの研究機関に滞在することが決定した。それらが決定したことにより、25年度中に海外で行なう研究や研究発表が、24年度当初に想定したよりも格段に多くなった。25年度中のそれらの海外での活動の費用を賄うため、24年度の支出はできるだけ限定することとした。 25年当初時点で、25年5月から9月の間に、国際学会での発表のための海外出張を2回(出張先はいずれも米国)、予定している。さらに、25年9月から26年3月にかけては、ヨーロッパの2つの研究機関(パドヴァ大学(イタリア)、リヨン大学(フランス))に滞在する予定で、準備を進めている。25年度の研究費は、(1)国際学会での発表のための旅費、(2)サバティカル研修期間中の海外研究機関への渡航費・滞在費、および(3)渡航先からの研究目的での出張のための支出に用いることを予定している。また、歴史的なデータの整備のため、研究補助謝金を支出することを予定している。これらのうち、旅費の支出は海外渡航の回数が多く滞在日数が長いことから、支出額が多くなる予定であり、25年度に使用可能な金額は25年度中に支出する予定である。
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Research Products
(5 results)