2013 Fiscal Year Research-status Report
経営者の属性と雇用システムの補完関係に関する実証分析
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23530327
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野田 知彦 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30258321)
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Keywords | 企業統治 / 日本的雇用慣行 / 経営者属性 |
Research Abstract |
本年度は、日本の中小企業データを用いて、同族企業と日本的労使慣行制度の関係を分析するした。 第1の仮説である同族企業と終身雇用制度について説明する。浦坂・野田 (2001)などはコーポレートガバナンスと雇用調整の関係を分析した結果、同族企業は雇用調整速度が速いことを実証している。この研究から、雇用調整に対する制約となりうる終身雇用制度が同族企業では存在しない傾向がある可能性が示唆される。また、野田・平野(2010)では、内部昇進型企業では内部昇進した経営者は従業員出身というその性格から、従業員の雇用を維持するインセンティブがあると述べている。これらの研究から同族企業では非同族企業と比べると終身雇用制度が存在しない可能性が考えられる。 第2の仮説である労働組合が終身雇用制度や年功序列型賃金に与える影響が同族企業と非同族企業では異なるという仮説について説明したい。例えば阿部(2006)では、オーナータイプの企業では評価に対する苦情処理の制度が存在しない傾向を指摘する。これは、 Villalonga and Amit(2006)も指摘するように、同族企業では外部からのチェック機能が不十分で会社を私物化し外部からの干渉を忌避する傾向がある。このように同族企業では労働組合を含め外部からの干渉を忌避する可能性が考えられる。 分析の結果、終身雇用制度に対しては、長期政権の経営者の企業では終身雇用制度が形成されない傾向であり、また、非同族企業と異なり同族企業では労働組合が終身雇用制度の形成を促進させる効果は確認されなかった。年功序列型賃金については、同族企業では存在しない傾向にあることが示された。同族企業の定義として、家族取締役率ではなく、社長の就任経緯を用いると、さらに同族企業の効果が明瞭となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
査読付きの論文に投稿できるレベルの論文を完成することができた。1年間で、上記の研究結果は、「同族企業と日本的雇用慣行-中小企業データを用いた検証- 」というタイトルで、「経済分析」内閣府社会経済研究所に投稿している。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿中の論文の掲載を目指すが、掲載後は、人員整理に対する経営者属性の効果を分析し、海外の雑誌に投稿したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会報告を行わなかったことおよび英文論文が完成していないため、英文校正費用を翌年に回した。 英文校正と学会報告の旅費に使用したい
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