2012 Fiscal Year Research-status Report
社会的選好と互恵的行動を導入したモデルによる財政的外部性問題の再検討
Project/Area Number |
23530356
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
佐野 博之 小樽商科大学, 商学部, 教授 (60301016)
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Keywords | 資本課税競争 / 政治的競争 / 社会的選好 |
Research Abstract |
平成24年度は、中央政府における政治的競争と地方政府間の財政的競争を扱った文献を中心に精査し、理論モデルの構築を試みた。地域間で資本課税競争が行われる状況での中央政府の役割に注目しつつ、この分野の研究の流れに沿って、中央政府の意思決定過程に政治的競争を取り入れたモデルの構築を試みた。 中央政府は一般に、地域間の財政格差を減らす目的で地域間の再分配政策を行っている。この政策は、本来の目的とは別に、財政的外部性を内部化し資本課税競争を緩和する効果を持つことが、最近の研究で示されている。しかし、これらの研究では、地域間の再分配の程度を与件として扱っている。私のモデルでは、再分配の程度は中央政府における政治的競争を経て、内生的に決まるものとしている。中央政府の意思決定は、各地域の住民が投票を通じて選出した代議員からなる議会で行われるものとし、各代議員は自らに有利な政策が実現するように行動する。他方で、各地域の決定力を持った投票者(中位投票者)は自分の効用を最大化するために、戦略的に好ましいと考えられるタイプの代議員を選出しようとする。このとき、代議員のタイプは社会的選好によって識別されるものとする。具体的には、自地域以外の地域住民にも関心を持つとき、功利主義的な社会的厚生とロールズ的な社会的厚生のどちらをより選好するのかによってタイプが識別される。この際、投票者自身は自分の効用のみに関心があっても、戦略的に社会的選好を持った候補者を選出する可能性がある。モデルの外生変数の値によって、功利主義的な候補者が選ばれる場合とロールズ的な候補者が選ばれる場合が考えられ、それぞれの結果で地域間再分配政策の程度が決まり、その結果資本課税競争に与える影響も変わることが予想されるが、分析が複雑でまだ結果を導出するには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究目的に沿った理論モデルがかなり複雑で、明確な結果をもたらすような形を見つけることに時間がかかってしまった。また、当初想定していたよりも時間がかかることには気づいていたものの、他の業務との兼ね合いで、更なる時間を捻出することが難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究を継続し、十分な時間を確保して、論文を仕上げる。研究会等で報告し、修正を加えた上で、学術雑誌に投稿する。さらに、スピルオーバーを伴う地方公共財供給問題の研究を行う。この研究は、現在行っている研究をベースにするので、それほど多くの時間を必要としないものと予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値計算ソフトとパソコンの購入。 学会等への旅費、および、論文の英文添削への支出。 関連する文献(本および論文)の購入。
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