2014 Fiscal Year Annual Research Report
国際金融危機対応としてのPSI(民間セクター関与)と資本流出規制
Project/Area Number |
23530359
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒巻 健二 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90295056)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | PSI / 民間セクター関与 / 資本流出規制 / 国際金融危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際金融危機への伝統的な対応は、危機国による経済調整と国際的金融支援の組合せであるが、資本フローの急激な逆転による危機(資本収支危機)の頻発に伴い、資本フローに直接働きかけ実効的な危機解決を図る試みが見られるようになった。本研究はそうした非伝統的な危機解決策(PSI(民間セクター関与(典型的には融資残高の維持))及び資本流出規制)の近年の発動事例をとりあげ、その将来的な活用に向け教訓を得ることを目的とした。 このため、個別のPSI事例として韓国(97-8年)、ブラジル(98-9年)、トルコ(2000-02年)、複数の国を対象とするPSI事例として中東欧(ヴィエナ・イニシャティヴ)(2008-09年)、資本流出規制事例としてアイスランド(2008年-)を選定し調査・分析し、事例が限定されていることから一般化には慎重であるべきであるが、PSIの発動については、国際的な協調行動が形成されること、債権者銀行の母国当局が説得行動に参加すること等の場合に、融資残高の維持の合意形成及び遵守がされやすいと考えられること、合意の形成後、資本流出が緩やかとなり危機の緩和に貢献したとみられるケースがあること、為替レートの安定化に大きく寄与した事例もあること等が見出された。 資本流出規制については、わずか一例であるが、銀行システムの中核を占める主要銀行の同時破綻の下でいわば非能動的に導入された包括的規制が結果的に資本流出の抑制及び為替レートの安定化に大きく貢献し、実体経済への悪影響の抑制に寄与したとみられること等の示唆が得られた。この関連で先進国の経済枠組みの定める資本移動の自由の原則と特に開放的な先進小国によるリスクの制御措置をどのように調和させるかが重要な課題として登場している。これまでの研究成果は、ロンドン大学におけるセミナー等で発信する予定である。
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