2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530389
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
八塩 裕之 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (30460661)
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Keywords | 所得再分配機能 / 所得課税 / 所得控除 / 地方税収格差 / 高齢化 / 公的年金等控除 |
Research Abstract |
今回の研究では「税と社会保障制度が近年の格差問題に与える影響」と「税と社会保障が国と地方の財政関係に与える影響」の2つのテーマを掲げているが、それぞれのテーマで研究成果を上げることができた。これらを順番に簡潔に説明する。 最初の「税と社会保障制度が近年の格差問題に与える影響」については、日本の勤労者の所得課税制度による所得再分配機能が諸外国と比べて非常に弱くなっている実態をデータで分析した。日本の課税制度の特徴は所得控除を広く認めていることであり、これが再分配機能を弱める原因となっていることを示した。分析結果は研究会で報告を行ったが、その内容は「租税研究」765号に掲載されている。今後、さらに研究を進め、投稿論文へと仕上げていく予定である。 一方、もう一つのテーマである「税と社会保障が国と地方の財政関係に与える影響」については、投稿した論文が「財政研究第9巻」(日本財政学会機関紙)に掲載された。この論文では、高齢化の影響で近年、家計全体の所得(勤労所得+公的年金給付)に占める公的年金給付の比率が高まっているが、これが高齢化の進んだ地方部の個人住民税の課税ベースを大きく侵食させている実態を示した。公的年金給付には寛大な公的年金等控除が認められるため、家計の所得に占める年金給付の比率が高まると、課税ベースの侵食が進んでしまう。都道府県のパネルデータを用いた計量分析で、そうした実態を分析した。
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