2012 Fiscal Year Research-status Report
近代ロシア製粉業の技術構造と市場競争条件に関する実証研究
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23530409
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
中川 雄二 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (30227756)
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Keywords | ロシア |
Research Abstract |
平成24年度の計画では、ロシア連邦モスクワ市に出張し、同市の古文書館等(ロシア国立図書館、ロシア科学アカデミー社会科学情報研究所[ИНИОН]、モスクワ市古文書館等で19世紀末~20世紀初頭のロシア製粉業の経営組織、技術、流通、および市場の形成と展開に関わる史料の調査と収集、並びに現地研究者との研究交流を10日間の滞在予定で行う。次に、収集した史料を製粉関連産業内の業種・業態を基準に整理分類し、業種や業態ごとの経営と技術の特性・構造・機能、業種・業態間(主体間の垂直的・水平的)関係、並びに国内外の市場構造に関する分析を行う。さらに、分析の結果を経済史関係の学会や研究会で報告し、議論を通じて分析結果や論理構築の妥当性を検証する。その上で検証結果を精査の上、ケーススタディーの論文等で成果を公表するという計画であった。 平成24年度は、3月10日~26日の期間(約2週間)、ロシア連邦モスクワ市に出張し、主にロシア国立図書館に資料の調査と収集を行った。平成23年度の出張に際してサンクトペテルブルグ市のロシア国立図書館で収集が叶わなかった資料である"Русский мельник"(ロシアの製粉業)と"Вестник хлебной торговли и мукомольной промышленности"(通報 穀物貿易と製粉業)の19世紀末~20世紀初頭にかけての関連記事や製粉企業の定款等の資料が今回の出張で調査・入手できたことは大きな成果であった。 これらの資料は、19世紀末から20世紀初頭に至るロシア製粉業の技術構造や製品の構成と供給の実態、さらに国内外の穀粉(小麦・ライ麦)市場での競争条件を解明する上で重要な資料である。 目下、資料の解析を行っており、ケーススタディーの論文として投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、20世紀初頭の期間を限定し、世界資本主義の進展という文脈の中で農産物輸出をめぐる国際競争に参入しつつ、輸入代替工業化の過程を歩む近代ロシア製粉業の技術構造と競争条件を、原料供給、加工・流通、市場、並びに産業政策という規定条件との関連で解明することを目的としている。具体的には、近代ロシアの製粉業界の後進性と競争劣位を規定する諸条件、並びにそれらの克服をめぐる革新的条件を、業界構造と国際的な技術条件・市場競争条件との対称性の視点から分析する。この分析を通じて、世界市場における近代ロシア製粉業のポジションと展開条件を解明することを目標としている。 これまで、平成23年度と平成24年度の3月期にサンクトペテルブルグ市とモスクワ市に出張し、計画に従い、ロシア国立図書館や古文書館等で資料の調査と収集を行った。資料の調査と収集は、現時点で順調に進行しているが、現地物価の高騰によりコピー代等の収集に係わる費用が当初の概算を超えており、活動において制約があることも否めない。そうした中、当時の製粉業の業界誌等の記事や製粉企業の定款といった貴重な資料が入手できている点で概ね計画は順調に推移していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度における出張でロシア製粉業の進展において地域的な特性が明らかになりつつある。平成25年度は、この点と穀粉市場における競争条件の特性を踏まえ、製粉業における原料供給、加工・流通、市場、並びに関連の政府・業界団体の支援策についてさらなる資料の調査と収集を行うこととしたい。 具体的には、上記に係わる製粉企業の経営戦略上の特性を解明するために、モスクワ市の古文書館とロシア国立図書館において経営や支援策に係わる資料の収集を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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