2011 Fiscal Year Research-status Report
企業グループにおけるダイベスティチャー戦略の包括的実証研究
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23530436
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大坪 稔 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (90325556)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | MBO / 親子関係 / ダイベストメント / リストラクチャリング |
Research Abstract |
本年度の研究計画は、子会社を対象としたMBOが親会社の株主価値を高めるのか否かについて、イベント・スタディをもちいて測定することであった。日本企業で、かつ子会社がMBOの対象となった190ケースを対象とする実証分析を行った。その結果、つぎの3点があきらかになった。 第一に、子会社MBOの実施年において親会社の会計上のパフォーマンスが低下する点である。さらに、子会社MBOの実施以降においてパフォーマンスの改善を示す結果が部分的ではあるものの得られた。第二に、子会社MBOの実施前後において、親会社の多角化度の低減、負債比率の低下、ダウンサイジングがみられる点である。さらに、このうちダウンサイジングが親会社のROAの改善に寄与するのに対し、多角化度の低減は寄与しない、負債比率の低下については反対にROAの低下をもたらすことが明らかとなった。第三に、子会社MBOの公表に対して親会社株価が全体としてマイナスに反応すること、さらにダウンサイジングを実施している親会社における子会社MBOについてのみプラスに反応することが明らかとなった。 これらの結果より、日本の親会社がなぜ子会社MBOを実施するのかについては、親会社利益増大仮説とダイベスティチャー仮説が妥当すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、23年度にMBOの対象となった子会社におけるMBOの公表時における親会社の株価の反応について分析を行う予定であった。そのうえで、24年度にMBOの対象となった子会社とその親会社の会計パフォーマンスの長期的変化について分析を行う予定であった。しかしながら、23年度に執筆・公表した論文「日本企業における子会社MBOと親会社のパフォーマンス」において、これら二つの研究が網羅されており、その意味で当初の計画以上に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方として、(1)米国企業の企業グループに関するサーベイ、を行い、そのうえで、(2)日本企業のダイベスティチャー、について実証分析を行う予定である。(1)の米国企業の企業グループに関するサーベイについては、米国企業の企業グループについて資本関係の側面から分析を行う。日本企業において親会社が子会社を持つに至る経緯の大部分が「分社化」である。これに対し、米国企業では分社化以外に、M&Aや資本提携(及びその後の持株比率の増大)など多様な経緯が存在する。特に、近年、日本企業においても米国企業においても資本提携を通じた関連会社化、さらには持株比率の増加に伴う子会社化という現象が広くみられつつある。そこで、資本提携をはじめとして企業グループの生成に関連のあるテーマについて広くサーベイを行う予定である。 (2)の日本企業のダイベスティチャーについては、日本企業が実施しているダイベスティチャーのひとつである子会社上場を取り上げ、これらについて米国企業と比較しつつ実証分析を行う。子会社上場は、米国ではエクイティ・カーブ・アウトとよばれ、ダイベスティチャーの一形態として位置づけられている。日本企業においては、日立製作所や新日鉄をはじめとして多くの企業がこれまで子会社を上場させ、上場子会社として存続させてきた。そこで、どのような日本企業が子会社上場を実施しているのか、子会社上場前後における親会社と子会社の財務状況はどのように変化するのか、について実証分析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『今後の研究の推進方策』に述べたように、今後の研究の進め方として、(1)米国企業の企業グループに関するサーベイ、を行い、そのうえで、(2)日本企業のダイベスティチャー、について実証分析を行う予定である。そのため、次年度でははじめに米国企業の企業グループに関するサーベイを行う予定であり、その際には米国の大学に一部滞在する予定である。したがって、次年度の研究費の大部分は米国の大学への滞在費に充てる予定である。
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