2012 Fiscal Year Research-status Report
企業グループにおけるダイベスティチャー戦略の包括的実証研究
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23530436
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大坪 稔 佐賀大学, 経済学部, 教授 (90325556)
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Keywords | 子会社上場 / ダイベストメント / M&A / リストラクチャリング / 企業グループ |
Research Abstract |
本年度は、日本企業の子会社上場に関する実証研究を実施した。子会社上場は、米国ではエクイティ・カーブ・アウトとよばれ、ダイベスティチャーの一形態として位置づけられている。日本企業においては、日立製作所や新日鉄をはじめとして多くの企業がこれまで子会社を上場させ、上場子会社として存続させてきた。そこで、どのような日本企業が子会社上場を実施しているのか、子会社上場前後における親会社と子会社の財務状況はどのように変化するのか、について実証分析を行った。 分析の結果、つぎの4点があきらかとなった。第一に、米国企業と異なり日本企業では子会社上場が頻繁に行われている点、さらに上場後は長期にわたり同一の親会社のもとで上場子会社として存続する点である。 第二に、米国企業と同様に日本企業においても子会社上場の公表に対し、親会社株価がプラスに反応する点である。さらに、この親会社株価の反応は様々な要因に影響を受けることもあきらかとなった。 第三に、上場前後における親会社および子会社の財務数値の変化についてみた場合、子会社上場を行う親会社は同業他社と比較して負債比率が高いこと、上場時に負債額が減少し、その減少額が上場時の資金調達額とプラスの関係ある点である。 第四に、子会社上場後の親会社と上場子会社の株価の推移より、親会社と比較して上場子会社はリスクが低い点である。ただし、上場後3年以内に公募増資を実施した上場子会社の割合は4%にすぎず、子会社資金調達仮説については支持する結果を得ることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本の子会社上場に関する実証研究を実施し、その結果を査読付きの英文ジャーナルへ投稿し、掲載可となった。このような研究結果より、当該研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、日米企業の共同出資(ジョイント・ベンチャー;JV)に関するサーベイを行い、そのうえで日本企業を対象とした実証研究を行う予定である。これまで、米国企業を対象とした実証研究の結果として、①JVには多様なメリットが指摘されていること、②メリットにも関わらず、JVは短期間のうちに消滅する傾向にあること、③短期間の消滅がかならずしも株主価値を低下させるとは限らないこと、が明らかとなっている。そのため、このような米国企業における実証結果を踏まえつつ、日本企業を対象としたJVに関する実証分析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、米国企業を対象とした共同出資(ジョイント・ベンチャー;JV)に関するサーベイを実施し、そのうえで日本企業を対象とした実証分析を行う予定である。サーベイについては、JVの「存続期間」に関する研究とJVの形成や消滅が親会社の株主価値に及ぼす影響に関する研究、の二つに大別される。 そこで、これら二つの研究に関するサーベイを行い、そのうえで日本企業を対象としたJVの実証研究を実施する予定である。なお、米国企業を対象としたサーベイについては、必要があれば米国にて資料収集を行う予定である。
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