2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530452
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
加藤 敦 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00329963)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 ベトナム / ソフトウェア分業生産 / オフショア開発 / 地域ソフトウェア会社 / グローカル経営 / モンテカルロ・シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は地域ソフトウェア会社のグローカル経営について2つの課題に分けて取り組んできた。第1に「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」についての研究実績は次の通りである。(1)文献調査・海外現地調査:中国・インドの文献調査を進める一方、(財)組込みシステム振興機構ミッションの一員としてベトナム現地調査を行った。ベトナムでは日本製造業の開発拠点、現地有力ソフトウェア会社、ハノイ工科大学、ベトナム国家大学、FPT大学などを訪問し情報収集並びに意見交換に努めた。(2)事例研究並びにリアルオプション定式化と定量評価:オフショア開発との競合・補完という観点から「国内オフショア開発」の経済性を定量評価した。また先進事例として沖縄ソフトウェア産業の事例研究を行った。沖縄県はIT産業振興をめざし、顧客オンサイトにおいて上流工程へ参画し、下流工程を「持ち帰り開発」するモデルに取り組んでいるが、当該モデルの将来的な採算性並びに推進の条件について考察した。研究にあたっては沖縄県に出張し、中核ソフトウェア会社経営者など関係者インタビューを行った。(3)研究成果の公表:同志社女子大学出版助成制度を活用し単著『ソフトウェア・ビジネス:利用側と提供側の双方に立った複眼的研究』(晃洋書房)を刊行した。本書は基礎編と研究編から成る。基礎編では文献調査にもとづき、ソフトウェア産業並びにソフトウェア利活用について、国際的視点から我が国の現状と課題を明らかにした。研究編では2000年以降に発表したソフトウェア産業についての研究成果をとりまとめた。先述の「国内オフショア開発」を第12章に掲載するなど、地域ソフトウェア会社のグローカル経営について現時点での成果を体系化し公表することができた。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については文献調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に研究課題「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」について文献調査、海外現地調査、事例研究、リアルオプション定式化と定量評価については概ね予定通りの進捗である。一方、研究成果発表並びに専門家委員会を通じた研究過程管理等については計画未達である。しかしながら同志社女子大学出版助成(100万円)を受け、単著『ソフトウェアビジネス:利用側と提供側の双方に立った複眼的研究』(晃洋書房)を刊行し、当該単著を通じ地域ソフトウェア会社のグローカル経営についての問題認識並びに現時点での研究成果を体系化し公表したため、研究成果発表という目的は達成することができた。また複数のIT開発に関する実務家の自主研究会に参加し、研究状況について適宜、意見交換を行ってきた。なお事例研究の対象について、当初計画では平成23年度に海外企業の日本支社、平成24年度は九州・沖縄地区の地域企業としていたが、国内企業の現状と課題を早い段階から整理しておいた方が良いと考え順序を逆にした。また本年度事例研究にもとづき2012年9月に開催されるインド最大級のIT産業シンポジウムCUBE2012において"Software Industry in Okinawa :The Critical Success Factors for the Japanese Bangalore"という題で口頭発表を行う予定である(採用通知受)。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については予定通り文献調査を進めてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に研究課題「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」については文献調査・事例研究を次の通り進める。まずグローカル経営という見地から我が国の先進的な地域ソフトウェア会社を対象として事例研究を拡充する。すなわち沖縄県の継続調査の他、インドやベトナム、華僑社会との連携を進める鳥取県、石川県、兵庫県などの地域ソフトウェア会社を調査対象に加える。次に海外企業のうち日本国内に営業・生産基盤を設けている企業を対象として、その経営戦略を検討する。さらにベトナムとの競合・補完・連携の可能性について、いくつかの類型に分けて事例研究を進め、必要に応じ補足調査を行う。(現地動向調査予定者である吉田勝彦氏との共同研究も視野に入れる。)第4にソフトウェア大国インドでの研究報告と併せ現地調査を行う。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については文献研究・事例研究を次の通り進める。まずクラウド環境を活用してソフトウェア提供を行う先進的な地域ソフトウェア会社の事例研究を行う。次にインド、中国、ベトナムのソフトウェア産業動向を継続的に調査しクラウド型プラットフォームにおける我が国企業の進出の可能性について資料収集を進める。 第3にリアルオプションモデルの定式化と定量評価に努める。既モデルの精緻化を進める一方、クラウド環境下のソフトウェア生産のモデル化を検討する。 第4に研究成果公表に努め、専門委員会を通じた研究過程管理を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1に研究課題「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」に関して文献調査・事例研究のため次の通り研究費を使用する。まず我が国の先進的地域ソフトウェア会社を対象とした事例研究のため、出張旅費、書籍・文献購入費並びに経営者・専門家へのインタビューのための謝金を計上する。次に海外企業の日本事業所を通じた調査のため、出張旅費等にあてる。さらにベトナムについては必要に応じ補足のため現地調査を行う(同行予定者:吉田勝彦氏)。なお先述の通り2012年9月に開催されるインド最大級のIT産業シンポジウムCUBE2012において口頭発表を行い、あわせて現地調査を行うが、当該費用は学内助成制度を活用する予定である。この他、書籍・文献購入費を計上する。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」に関する文献研究・事例研究のため、書籍・文献購入費並びに経営者・専門家へのインタビューのための出張旅費、謝金を計上する。 第3にリアルオプションモデルの定式化と定量評価の推進のため、先行研究調査のため書籍・文献購入費を計上する。 第4に研究成果公表のため学会発表等関連費用を計上し専門委員会開催のため謝金、会議費等を費消する。さらにWEBページ開設・維持費を計上する。
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Research Products
(3 results)