2011 Fiscal Year Research-status Report
日本企業のグローバル化における言語戦略と組織能力の構築に関する探索的研究
Project/Area Number |
23530466
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
澤木 聖子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40301824)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 言語戦略 / 日本:韓国:中国::シンガポール / 多国籍企業 / 人材育成 / 組織能力 / 国際情報交流 / 国際研究者交流 / 異文化間マネジメント |
Research Abstract |
平成23年度に進めた研究実績は以下のとおりである。1.先行研究に関する文献調査・・・本研究の出発点となった2000年当時の日韓中を対象とした多国籍企業の英語化戦略の研究成果と比較し、今日の日本の国際化における言語戦略の動向を把握することに努めた。2.経営の国際化における英語の社内公用語化をめぐる議論の整理・・・今日の日本企業における言語戦略は、製造業と非製造業において異なる特徴がみられる。過去10年と比べ、製造業では、現地の中間管理職層以上に日本語能力を求める構図は依然として変化していないものの、日本人社員にTOEICの高スコアを求める育成方針がより顕在化しつつある。商社・IT・小売業では、従来どおり英語化を重視しつつも、社員の人材育成の目標を3か国語以上のマルチリンガル化にシフトさせる傾向が認められる。その一方で、実務家による英語化無用論の議論が生起していることも看過できない。これらの議論を踏まえてリサーチデザインの精緻化を進めた。3.韓国における言語コミュニケーション研究の動向把握と研究協力者との意見交換・・・本研究では、日本企業との比較分析の対象として韓国企業を取り上げている。次年度の本調査で予定している質問紙調査の調査票作成に先立ち、韓国人の言語学、文化論、経営学の諸研究者に専門知識の享受を求めた。また、韓国の異文化マネジメントにおける言語コミュニケーションの諸相を知るため、韓国の言語学の研究者を招き、所属機関で講演会を開催した。4.韓国企業の言語戦略に関する予備調査・・・日本企業の予備調査に先立ち、韓国企業のこんにちの動向について確認する作業を行った。日本に進出している韓国系二大家電メーカー、およびグループ企業を訪問調査し、韓国親会社と日本現地法人での言語戦略の異同に関する取材を行った。以上が、平成24年度の研究の継続に向けた平成23年度の研究概要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の申請時における平成23年度の研究計画は次のとおりである。1.先行研究にかんする文献調査とフレームワークの精緻化 2.調査対象企業の選定及び半構造的インタビューリストの作成とヒアリング調査 3.日本企業本社向け質問紙調査票の作成 4.韓国企業の訪問調査の準備 5.研究経過の学会報告 このうち、1.に関しては、現在も継続中であるが、ほぼ当該年度に収集すべき資料の解読とフレームワークの精緻化については完了に近づいていると評価する。2.と4.については、在日大手韓国系グループ企業と調査協力の交渉を重ね、長期的な調査協力の許可を得ることができるようになり、日本、韓国に訪問調査を続行できる環境にある。半構造的インタビューの情報も随時整理している。5.については、学内の講演会を開催し、韓国の言語学の専門家と言語コミュニケーションや韓国人の言語観について意見交換を行い、その成果をまとめつつある。所属学会の全国大会では司会・コメンテータの依頼に応えたものの、自身の報告も進めるべきと反省している。 以上、3.の日本企業本社向けの質問紙調査票の作成が遅れている。この原因としては、当該年度に奇しくも事例調査の選定企業に予定していた日本の製造業の業績不振が災いし、調査研究の快諾の時機を得ることが難しい環境にあったことが挙げられる。本研究のフレームワークとして、日本企業の言語戦略を製造業・非製造業に区分することが重要と考えられるに至ったことから、平成24年度には順次コンタクトを取って研究を進めていきたいと考える。これらのことから、平成23年度の自己評価を、(2)おおむね順調に進展している、と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、日本国内と海外(韓国を中心)に本調査を実施することが研究の中核となる。1.日本企業本社に向けたヒアリング調査の実施 2.日本企業と韓国企業に向けた質問紙調査票の作成と実施 3.韓国企業(日本現地法人・韓国本社)へのヒアリング調査(*ここ数年の国際経営の動向により、日韓中の東アジア圏に研究対象を拡大し、加えてマルチリンガルな異文化マネジメントを行う多国籍企業の集積地、シンガポールを調査対象に加えることも検討中である)。質問紙調査と並行して、初年度に引き続き、上記の企業群の他に、社内公用語を英語化している企業を訪問し、ヒアリングによる事例調査を行う。4.調査データの分析 5.研究経過の学会報告 平成24年度内に実施できた国内外の調査結果の一部を整理し、学会報告を行う。エントリーが間に合わない場合は、研究会やセミナー形式で報告を行う。 上記1.~3.で実施した質問紙調査とヒアリング調査の結果を整理し分析する。データ解析に際しては、研究補助要員の協力を得る予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本調査研究に用いる研究手法は、上記の研究推進方策に示したとおり、企業を対象とした質問紙調査、訪問インタビュー調査が中心となる。 次年度に必要になるのは、1.論文・図書購入費、2.質問紙調査票の印刷代、3.質問紙調査を郵送法にした場合の通信費、4.記録媒体類の消耗品代、5.国内・海外の調査の旅費、6.成果報告や意見交換のための出張旅費、7.質問紙作成、データ収集と回収整理の過程で発生する研究協力者、研究補助者に対する謝金である。 1.2.は前年度からの継続として平成24年度に繰り越した基金から支出を予定している。5.について、平成24年度中に、東(南)アジアのグローバル企業の海外戦略の情勢が顕著に変化し、本研究の調査対象地域を拡大した場合、所定の配分予算内で研究計画を遂行できるものと考える。
|
Research Products
(1 results)