2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530467
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曳野 孝 京都大学, 経営学研究科, 准教授 (50301825)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
チョルパン アスリ 京都大学, 白眉センター, 准教授 (70511286)
|
Keywords | ビジネス・グループ / 経営戦略 / 経営組織 / 国際経営 / 発展途上経済 / 国際研究者交流 / ヨーロッパ / 北アメリカ |
Research Abstract |
本年度は、疾患による初年度の遅延を取り戻すために、実証的な研究に本格的に着手しながら、研究成果を理論的に整理して、特に国際学会、研究会における研究発表に専念することになった。特に成熟経済におけるビジネス・グループに焦点をあてた研究に関して言えば、理論的な概要は以下のように要約できる。 これまで、ビジネス・グループは、開発途上市場においてのみ、企業の競争力の向上に積極的な役割を果たし、当該国の長期の経済成長に多大な貢献をしてきたとされており、成熟経済においては競争劣位に陥ると理解されてきた。すなわち、このビジネス・グループ、特に巨大なグループは非関連多角化を製品戦略として追求し、持株会社と子会社という組織構造を維持してきたが、この戦略と組織との特徴に関して、本研究は企業内に蓄積された競争資源とその資源を動的に活用する能力に注目して、それらの要素がビジネス・グループを当該国の国内市場だけではなく、国際市場においても競争可能な経済主体に引き上げたことを実証的、理論的に考察した。 この新しい視覚から整合的に理解することが可能になる。この競争資源あるいは能力は、成熟工業経済における大企業が保有する製品に固有のものとは異なり、個別製品を越えた、より機能的な要素、例えば金融・財務、人的資源、マーケティングに関係するものであり、とりわけ組織マネジメントといった企業組織の統合的要素に関連するものであった。したがって、個別のビジネス・グループがどのレベルの国内、国際競争力を実現、維持出来るかは、持ち株会社形態をとる本社機構が、個別の事業にどのレベルの投資を行うかという資源配分だけでなく、それらの事業会社をどのように統合するかが重要であることが研究成果として理解された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、ほぼ全面的に文献研究に専念せざるを得なくなったことによって、理論的な研究の進展という側面においては、かえってプラスの効果を得ることになった。すなわち、一旦現実の企業から距離を置いて、過去の文献を選択、精査、批判するという作業を通じて、これまでの研究が成し遂げた成果を評価できる時間的な機会が与えられたというだけでなく、同時にそれらの研究が見落としていた大きな課題が明らかにできた。「研究実績の概要」の項で強調したビジネス・グループ内部の競争資源についての議論が不足しているという問題である。近年の企業競争力に関する研究が、かつてのポーター流の外部環境重視ではなく、内部資源に着目するという視覚の移動を考慮すると、この問題は重要視されるべきと思われる。 この新しい内部資源の視覚は、初年度の実証成果の不足を補って余りあると考える。第2年次およびそれ以降の年度について、実証研究、特に企業へのインタビュー調査において、質問項目の組み合わせを再考する機会を与えられただけでなく、研究全体の調査の再検討が可能になった点で、大きなプラス効果をもたらした。さらに、初年度に続いていくつかの国際学会でその成果を報告できたことは大きな成果と考えられる。その意味で、これまでの研究の達成度には満足している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究分担者であるアスリ・チョルパン准教授は、平成24年度から平成25年度にかけてアメリカ合衆国のハーバード大学およびマサチュウセッツ工科大学において客員教授の任にあり、アメリカを中心とする先進経済のビジネス・グループの研究に従事している。同准教授は、平成25年度半ばにおいて日本に帰国する予定であり、それ以降において研究計画にあるビジネス・グループの国際比較のプロジェクトを、予定したような進行のペースを上回るスピードで発展させていく予定である。 平成25年度は、チョルパン准教授の海外留学の関係から遅れていた国際会議を開催することに向けての諸準備を課題としたい。この会議は、特に先進経済のビジネス・グループをテーマとして、約14ヶ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ノルウェー、ベルギー、オーストラリア、カナダ、日本および今日の新興経済圏)における同企業類型の長期的な発展趨勢を比較的に体系的分析を加えることを企図している。これらの対象国から、それぞれを代表する研究者に参加を求め、この研究課題についての世界的なレベルでの先端研究を統合することを目標としている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、過年度までの理論的考察と実証的研究とを統合するために、また上記の国際会議の開催に向けての準備に研究費を使用する。すなわち、平成26年3月に京都での開催を予定している国際会議の準備として、その場での議論を充実される目的から、6月にイスタンブールで開かれるAcademy of International Businessおよび8月にウプスラで行われるEuropean Business History Associationの年次大会においての発表を行うことが決定しており、その渡航費用と準備の研究に関連する諸費用に充当する。また、上記の京都で開催する国際会議についても、意味のある研究集会にするために周到な研究上の用意が不可欠であり、科研費をこの試験に充当する予定である。
|