2012 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャル・ビジネスの循環型発展メカニズムに関する研究
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23530506
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
水野 勝之 明治大学, 商学部, 教授 (70181899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 英典 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10601817)
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Keywords | 国際情報交換 アメリカ |
Research Abstract |
ソーシャルビジネスについて、浦安市のNPO法人好浦会の調査を行った。その結果を日本NPO学会全国大会(2013年3月東洋大学)で報告した。報告に対して、 1)好浦会の知識の創造とその迅速活用が震災復興の要なのではないか 2)「知の創造」が「産業の創造(震災復興ソーシャルビジネス)」を生み出し、「知の創造」が正しくフィードバックされる好循環を作り出すことが重要。そのためには双方(産学)にとってインセンティブをもたらす制度設計が不可欠であり、ここに好浦会がハブとして制度設計に貢献した 3)今後、震災復興ソーシャルビジネスをどこまで継続し、収益を上げることができるのか注視していきたいと思う 等のコメントをいただいた。掘り下げた研究が功を奏した。好浦会は、地域に密着し、様々な価値観に基づいて多様で迅速に行動できるNPOであり、個別的で柔軟なサービスを提供することが可能であり、公平性や平等性を重視すべき行政では提供が難しい新たなソーシャルビジネスの供給主体として、その役割が期待される。今後とも好浦会のこうした検証に照らしながら、他のNPO法人などの研究を行い、行政や企業との連携の在り方を探っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)日本ではSBが成功していない。NPOは補助金に頼らざるを得ないため、必然的に行政の方針に従った活動を行うことになる。またCSRを行っている企業も、社会への売り込みのための広報に力点を置いてしまう。これらの実態をに迫り、SBの現状における難点、およびその発展条件を明らかにするために、①非営利型SBと営利型SBの調査、②NPO法人関連のSB、③CSR関連のSBの調査を行う。 2)行政サービスとしてのSBと自治体の役割を明らかにする。SBと市民社会の関係を調査し、SBを行う自治体の市民社会における役割を明らかにする。 3)SBの発展過程における促進要因と阻害要因を明らかにする。一からSBを立ち上げるのではなく、企業のCSRをSB事業に転化する可能性を検証する立場をとる。CSRとしてではなく、一事業として経営戦略に組み込まれる場合の成功を阻害する要因を明らかにして、その克服の方策を提案する。 4)SBの成功要因を明らかにする研究においては、その実施主体及び実施事業の健全性について検証する指標を開発する。本研究代表者がこれまでの研究で開発した、企業の質を計測する指標をSB対応用に改良し、SBの産出要素に対する質的評価法を示す。同時に、ここで構築したモデルを使い、SB実施主体の健全性評価法を生み出し、参入退出条件を明らかにする。 5)以上を総じて日本におけるSBの進展度の計測を行い、国際比較につなげる。 これらを目的として掲げてきたが、前述の日本NPO学会での報告にあるように、申請書に書き入れたNPO法人好浦会について、これらについて研究しえている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 事例研究:千葉県浦安市のソーシャル・ビジネス政策に見る自治体の役割 地方分権が推し進められるなか、これまでにない方法でSBを実施する自治体が増えている。これまでの好浦会の実証研究を通して、浦安での自治体の役割をモデル化していく。自治体とSBの協働による効果を明らかにする。 2)ソーシャル・ビジネスの発展過程における促進要因と阻害要因 これまでの研究成果から、SBとそれを取り巻く環境との関係性を明確にした上で、SBが事業として継続的に成功するための要因、および失敗する際の阻害要因を明らかにし、SBの発展メカニズムを明らかにする。 3)大学の役割の導入 これまでの行政、企業、市民団体との協働のなかで、NPO法人がどのようにソーシャルビジネスを展開するべきかの研究を行ってきた。そこに大学も関連させて、大学との協働でより一層ソーシャルビジネスの実効性が高まることを研究していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次の使用計画を立てたい。 1)大学がソーシャルビジネスの促進の潤滑油になっているところの調査の旅費:東北芸術工科大学のように、地域のビジネスの核となっている大学がある。このような大学調査の旅費として活用したい。 2)外国での、ソーシャルビジネスにおける大学の役割の調査の旅費:アメリカのバージニア州オールドドミニオン大学を訪問し、ソーシャルビジネスにおける大学の役割を研究する。 3)各地域のNPOのソーシャルビジネスの調査:日本の各地方のNPOのソーシャルビジネスを研究し、成功、失敗の要因を探る。
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