2011 Fiscal Year Research-status Report
日米コンテンツ事業のビジネス・エコシステムの比較研究
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23530510
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井上 達彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40296281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 勝 青山学院大学, 経営学部, 准教授 (80348458)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ビジネスエコシステム / ネットワーク / コンテンツ産業 / データベース構築 |
Research Abstract |
23年度に実施した研究は主に、1.データベースの構築、2.インタビュー調査、3.文献サーベイ、4.以上を踏まえた国際学会へのアプライと論文の公刊である。それぞれの詳細を説明する。1.データベースの構築については、主に日本の音楽産業を中心に進めた。結果、想定よりも長期間のデータを取得することができたため、研究計画よりも10年分多い、1974年から2004年までの約30年分のデータベースをほぼ完成できた。当該データベースは、研究計画にも記述したとおり、先行研究に則ったエコシステムの多面的な測定指標を計測可能なデータが入力されている。2.データベース構築と同時に、分析の解釈や変数構築を円滑にするため、大手レコード会社やクールジャパンを推進する経済産業省の担当者など、関係者へのインタビュー調査を複数回行った。聞き取り内容は主に、コンテンツ産業の歴史的変遷ならびに現状、日米のビジネスの違いや他産業との違い、コンテンツを生み出す際に協業するプレイヤー間のネットワークについてである。3.ネットワーク論にかんする研究ならびにコンテンツ産業の基礎を理解するための文献を中心にサーベイした。理論面においては、ネットワークにおける価値創造ならびにエコシステムを分析する際の基本枠組みを提供する文献をいくつか発見することができた。4.以上の調査を踏まえ、音楽産業にかんしては部分的に完成したデータベースを用いてテスト分析を行い、その研究報告は2012年8月に行われる国際学会Asia Pacific Conference on Information Managementにアクセプトされた。一方、日本のゲーム産業を対象にした調査も、2010年度の研究発表をベースに論文執筆を行い、学会誌Waseda Business and Economics Studiesにおいて論文を公刊することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要で述べた1.データベースの構築、2.インタビュー調査、3.文献サーベイのそれぞれ項目についてどの程度目標を達成したかを説明する。1.データベースの構築に関しては、予算を利用することで予定より早い段階でテスト用のデータベースが構築できたため、テスト分析の結果をまとめた研究発表を国際学会にアプライすることができた。また、音楽産業の国内データベースは想定よりも10年分多い30年分のパネルデータをほぼ完成するに至った。しかし、その一方で、日米間の定量データを単純に比較することが困難であることも調査で判明した。米国の音楽産業にかかわるデータソースである『Billboard』のランキングデータは、本研究で用いている日本のデータソース『オリコン年鑑』と集計方法が異なる部分も多いという点に加え、『Billboard』自体が1991年以降ランキングデータの集計方法を変更しているからである。2.インタビュー調査も概ね順調に実施することができた。大手レコード会社、メディア企業、コンテンツ産業政策を押し進めている担当者など、コンテンツ産業の関係者に対して幅広く実施し、コンテンツ産業の概要、音楽産業について理解を深めるとともに、関係者とのリレーションを築くことができた。3.ネットワーク研究の文献を幅広く探索することで、本研究で目的とするエコシステムならびにネットワーク分析の鍵となる論文をいくつか発見することができた。また、ネットワーク研究にかんする文献だけでなく、コンテンツ産業にかんする先行研究も同時並行で行い、定量分析を行うに当って必要となるメディアや技術、制度にかんする背景知識も取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は特に下記3点に焦点を当て、推進していく。1.日本の音楽産業を中心に研究を推進:これまでのインタビュー調査によって、コンテンツ産業の中でも音楽産業を分析する有用性について伺うことができた。あるインタビュイーによると、音楽産業は、CDやMP3などの媒体メディアのデジタル化や、テレビやインターネットなどの放送メディアの変化といったコンテンツ産業全体が経る環境変化が先立って起こる産業だという。そのため、コンテンツ産業全体を考察するうえでも、まず音楽産業を分析することで、その知見を活かすことができると考えられる。加えて、音楽産業のデータは、他のコンテンツ産業より、時系列的にも変数的にも統計データが充実しており、多面的な分析が可能である。以上の背景から、ほぼ完成している日本の音楽データベースを中心に定量分析を行っていくことが本研究の突破口になると考えられる。2.現場担当者へのインタビュー調査:これまでは、コンテンツ産業にかんする全般的な仕組みや、歴史的変遷といったマクロな視点からインタビューを行ってきた。今後は、このようなマクロな視点と同時にミクロな視点も得るため、現場担当者などから楽曲のヒット要因や有名アーティストの輩出要因など個別の事例についても調査していく。3.国際学会、海外ジャーナルでの研究の発信:本研究で得られた知見は国内に限らず、海外を含めて広範囲に発信するため、日本語ならびに英語論文化を行う。既に発表が決定したシアトルで行われるAsia Pacific Conference on Information Managementでの発表をはじめ、国際学会への発表や、海外ジャーナルへの投稿も積極的に行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、1.学会発表と論文校閲、2.データベース入力の業者委託、3.インタビュー調査のテープ起こしの業者委託、4.データベース分析用のPC購入などを中心に利用する予定である。1.学会発表にかんしては、上述のとおり、24年度に日本の音楽データベースのテスト分析の結果をアメリカのシアトルで発表する。そのため、最終年度の26年度に計上していた論文校閲費ならびに学会発表出張費を24年度に計上する。また、当該学会発表は、早稲田大学大学院博士課程所属の永山晋氏を同行し、共同で発表を行う予定である。永山氏は本研究をすすめるうえで不可欠なネットワーク分析に精通しており、共同で音楽データベースの構築ならびに分析を行っている。2.国内の音楽、映画、ゲーム産業にかんするデータベースは、現段階で得られるデータに関してはほぼ入手していると思われる。しかし、新たに有力なデータを発見した場合は、業者にその入力を外注し、作業のスピードを高めていく。また、業者による入力が不可能は作業の場合は、RAを利用しデータベースの構築を行う。3.コンテンツ産業の関係者に対するインタビュー調査は引き続き不可欠であり、上述のとおり24年度も複数の関係者にインタビューを行う予定である。既に複数の関係者に調査依頼をかけている。こちらも作業スピードを高めるため、インタビューの録音テープの文字起こしは業者に委託する予定である。4.現在構築している音楽のデータベースが想定以上に容量が大きく、現状で利用しているPCでは統計ソフトで分析する以前に、表計算ソフトなどで行うデータベースへの簡単な処理作業さえもすでに対処できない状況にある。そのため、処理速度の速いPCを購入することでこの問題を解決する。
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Research Products
(6 results)