2012 Fiscal Year Research-status Report
日米コンテンツ事業のビジネス・エコシステムの比較研究
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23530510
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井上 達彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40296281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 勝 青山学院大学, 経営学部, 准教授 (80348458)
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Keywords | ネットワーク / 組織学習 / ビジネスモデル / ビジネスエコシステム / コンテンツ産業 / データベース構築 |
Research Abstract |
24年度に実施した研究活動は主に、1.関係者へのインタビュー調査、2.定量データの統計分析、3.学会発表、論文執筆である。それぞれの詳細を説明する。 1.インタビュー調査については主に、楽曲製作に不可欠なレコード会社、プロダクション、音楽出版社の三者の関係構築がどのようになされているかについて業界関係者に聞き取りを行った。 2.定量データの分析については、昨年度構築した日本の音楽産業の1976年から2004年までの約30年のデータベースを用いた統計分析によって以下の点が明らかとなった。それは、ネットワークを結ぶ相手側のビジネスモデルに応じて、関係構築のメカニズムが異なると同時に、価値創造に適した関係構築のあり方も異なるという点である。 3.学会発表については、2012年8月にシアトルで行われた国際学会Asia Pacific Conference on Information Managementで上記の発見事実についての研究発表を行った。また、代表者がファカルティフェローを務めていた経済産業研究所の研究会においても複数回、本研究を発表した。これらの発表によって、適宜、研究者、実務家に研究の知見を発信すると同時に、有用なフィードバックを得ることができた。また、フィードバックを活かして執筆した論文は、2012年11月に『RIEITディスカッションペーパー』に掲載し、2013年7月にイスタンブールで行われるThe Association of Japanese Business Studies、2013年9月にアトランタで行われる国際学会Strategic Management Societyにアクセプトされた。国内を代表する経営学会誌である『組織科学』にも論文を投稿し、現在、査読を依頼している段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要で述べた1.インタビュー調査、2.データの定量分析、3.学会発表、論文執筆のそれぞれ項目についてどの程度目標を達成したかを説明する。 1.インタビュー調査:24年度はデータ分析、学会発表、論文執筆を重点的に行ったため、当初の計画よりもインタビュー調査の実施回数自体は多くないが、重要な定性データを得ることができた。関係者から得た定性データから新たな仮説が導出されたと同時に、データの定量分析によって得られた発見事実に対して、実務家の感覚と違和感がないという証拠も得ることができたためである。 2.データの定量分析:前年度の計画通り、構築したパネルデータを用いて様々な側面から統計分析を行うことができたため、計画通り順調に進展していると言える。重要な点は、24年度では、実務家への定性調査や研究発表で得られたコメントから、新たな発想を得ることができたことである。それは、概要でも述べた通り、ネットワークを結ぶ相手側のビジネスモデルに応じて、関係構築のメカニズムが異なると同時に、価値創造に適した関係構築のあり方も異なるという点である。ここから新たに仮説を構築し、統計分析を行い、主たる仮説が実証された。 3.学会発表、論文執筆:当初の計画以上に進展している。24年度に得られた発見事実にもとづいた論文は、25年度の国際学会発表にもアクセプトされ、国内の経営学会誌にも投稿されている。これらは当初計画では26年度に行う予定であったため、研究のアウトプットについては1年早く計画を前倒しできているといえる。また、米国の代表的経営学会の一つであるStrategic Management Societyにアクセプトされたことは、国際的にも本研究の知見が貢献できる可能性があることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、1.積極的な学会発表の実施、2.海外ジャーナルへの投稿、3.研究内容を発信するウェブサイトの他言語化の三点に焦点を当て、研究を推進していく。具体的な内容は以下である。 1.積極的な学会発表の実施。24年度の研究活動が一部計画よりも進めることができた理由の一つは、発表で得たフィードバックを活かして研究を精緻化し、再度、研究発表を行うという良循環をうまくまわせたからである。引き続き、25年度も国際学会をはじめとした場で積極的に研究発表を行っていく。 2.海外ジャーナルへの論文投稿。先述したとおり、本研究の現状の知見は論文化し、国内の学会誌(『組織科学』)へ投稿を終えたばかりである。国内学会誌の査読プロセスを通じて得たフィードバック、ならびに学会発表で得たフィードバックをもとに、より良質の論文へ洗練させ、海外ジャーナルへの投稿を進めていく。 3.研究内容を発信するウェブサイトの他言語化。本研究プロジェクトも終盤ステージにさしかかっているため、研究内容の外部発信にも力を入れていく。これまで行ってきた学会発表や学会誌への投稿だけでは、学術コミュニティに知識がとどまるおそれがあるため、ウェブサイトを経由して研究内容の知見を発信していく。代表者は、既に研究内容を外部に発信することのできるウェブサイトを構築しているが、これまでは日本語のみの発信にとどまっていた。そこで、25年度は、本研究の知見を世界に広く発信するためにも、英語、中国語などでも研究の内容を伝えられるよう、ウェブサイトを多言語化する予定である(既に一部構築済)。なお、サイトに掲載する研究内容は、執筆した論文をそのまま転載するのではなく、極力学術用語を控えて内容を要約したものを掲載することで、専門外の方々の興味も引けるように工夫する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の主な使用用途は以下を予定している。1.国際学会参加ならびに発表にかかる旅費、2.英文校閲費、3.インタビュー調査のテープ起こしにかかわる業者委託費、4.ウェブサイト制作費である。5.研究に必要な諸経費としての消耗品費。 まず、1.国際学会参加ならびに発表にかかる旅費として、25年度は国内国外あわせて20万円を計上する。当予算は、9月末から10月初頭にかけて米国アトランタで行われるStrategic Management Societyの参加費を念頭にしている。続いて、2.英文校閲費として10万円を計上する。当予算は、国際学会での発表資料や、海外ジャーナル投稿用の英語論文の校閲に利用する。3.インタビュー調査のテープ起こしにかかわる業者委託費は5万円を計上する。これまで業界関係者へのインタビュー調査はある程度行ってきたが、あくまで音楽業界関係者にとどまってきた。今後は、本研究で得た知見の一般化のためにも、音楽業界以外の実務家にもアクセスし、インタビュー調査を行う必要がある。4.ウェブサイトの制作費は10万円を計上する。当予算は主にウェブサイトの他言語化に必要な翻訳業者委託費である。先述したとおり、代表者はウェブサイトを既に構築しているため、ウェブサイトの制作は、研究内容の他言語化費用にとどめられる。最後に、5.研究に必要な諸経費としての消耗品にかかる予算を15万円計上する。当予算は、低額書籍やインク、印刷用紙など、研究をすすめていくうえで必要な物品購入費にあてる。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] 日本企業のイモベーション2012
Author(s)
井上達彦、Oded Shenkar
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Journal Title
Oded Shenkar(著)、井上達彦(監訳)『コピーキャットー模倣者こそがイノベーションを起こす』東洋経済新報社所収、特別寄稿論文
Volume: 特別寄稿論文
Pages: 194-219
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